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lost luggages ねぶくろ 書簡
--sleeping bag・g-ism/ist--

10-10-2002 / Thursday

_ 寝袋主義:

都合が悪くなると、潜り込むこと。

仕事が遅くなったときには、よく作業机の下で寝る。ゴミ箱や書類ケースを簡単に片付けて、隙間を作り、折り畳み式のござを敷く。その上に、寝袋を広げる。プラスチックパイプの入った枕は、バス停前の布団屋で、500円だった。

外の道路を通る車は、深夜になるとほんの少しだけ減る。毎日仕事をしている空間だが、夜になるとまた違った別の場所のようにも見えるのが不思議だ。高い天井を縦横に走るパイプの迷路を眺めているうちに、眠りに落ちていく。

明け方、地下の深いところを走る始発電車の振動で、温かな寝袋の中で目を覚ます。そういう朝を、あと何回、迎えるかな。

今朝は、もうすっかり秋の冷え込み。寝袋の上にそろそろ毛布を掛けて眠らないといけないな。


10-10-2003 / Friday

_ 今年に入ってからは、寝袋の出番があまりなかったのだが、出番がありすぎるのもまた問題ではある。ちょうどよい感じであろうか。

昔は体育の日だったのにな。祖母の命日なので、なんとなく特別な思い入れのある日でもある。目を大事にしなければいけない日でもある。今日は、ひさびさの休暇としようか。


10-10-2005 / Monday

_ なんと。本屋だけでなくて、市内の主な映画館も今年中に閉館らしいですね。。信じられない。古い話だけど、中学とか高校時代から親しんでいたルネサンスが閉館して、スペース・ベンケットがいつのまにかなくなって、コマ・ゴールド、コマ・シルバー、朝日シネマ、イタリア会館がなくなって以来、いつそうなってもおかしくはないなとは思ってきた。映画を観る場所もなくなっちゃうんだな。日本全国、均質空間に占領されてしまって、ちっちゃな地方都市が地方都市であるが所以も、もうどうでもよくなってしまうのだろうか。今はもういろいろなカフェやローカル・ラジオ局やレストランが入っている古びたビルに、まだ新聞社があったころ、私はOBを訪問に行ったことがあった。マスコミは全部、落ちてしまい、合格したのは大学院だけという笑い話をようやくはなせるようになった頃、新聞社もどこかへ移転してしまっていた。場所と人と記憶と。

_ 丸善。

帰国した日から、丸善に連日、足を運び、うだうだと徘徊してきた。夕方、寄ってみると、1階の檸檬特設コーナーに、人々が列をなしている。檸檬をすでに3冊(!)も買っている私は、もうそんなことはどうでもよくて、とりあえず、文庫階へ。文具階にも行きたかったのだけど、友だちと一緒だったので、センチメンタリズムに付き合わせるのは悪いと思い、友だちに「最後に丸善で買う一冊」として、小川洋子の一冊を強力に薦めて買わせた。自分は、丸善で買ったあれこれの本の事とか、文庫棚の前で待ち合わせて以来、疎遠になった友だちのこととかいろいろ短い間にあわただしく思い出していた。いつにない混雑。冷静に買うべき本を選んだつもりだったが、しっちゃかめっちゃか。

未亡人の一年(英語版で何度も読み返して、まだ読むのかいな)/忘れられた日本人(今、手元に2冊ある:旅本だからいいんだけど)/岩波の野上弥生子訳ギリシア・ローマ神話(北欧神話も入っているので買った)/エマ(オースティンのほう)/愛の続き(マキューアン)。

記念の原稿罫線入りメモ帳。記念撮影。一人だったら、カメラを取り出す勇気がなかったと思う。私が取り出したら、みんなも取り出したのがおもしろかった。用事を済ませたのが8時過ぎ。あと1時間、名残を惜しもうと思って、引き返してきたら、今日は7時で閉店だった。

さようなら、「檸檬」の丸善。

夕方、梶井基次郎が檸檬爆弾を買った果物屋の前を通ったのだけど、こちらはしんとしていた。

ソニープラザも今の場所では、今日で最後。朝日シネマはとうの昔に閉館。サンシャイン・カフェはすんごく今時の場所に移転(not so badな場所なのだけどね)。思いっきり、センチメンタルに浸りながら、帰ってきた。ヴァージン・メガ・ストアがなくなって以来、まともにCD屋をのぞかなくなったものなあー。本屋は生協とブックファーストと丸善の三本柱で来たので、あのときほど打撃を受けることはないだろうか。うーん、それにしても、なんでこんなことになるのだろう。うーん。

_ 昔からそうだったのだけど、日本から外国へ行くときは、まったくなんの問題もなくすっと現地の生活に入り込める。行き先がどこであれ、問題はなかった。ところが、日本へ帰ってくると、なかなかこちらの生活になじめない。ひとつには、旅の間の緊張と疲れが一気に表面化するからだろう。だから普通は、丸一日ゆっくりやすんでから、まずは身体的な疲れを取り除いて、それから徐々に生活環境になじんでいこうとする。それにかかる時間が異常に長いのだ。日本って、こんな感じだったっけ、前もこんな感じだったっけ、と思いながら過ごすからなのか、外国でみる新しいものやめずらしいものになじむ感覚とは根本的に違って、思い出したり、修正したりに時間がかかってしまう。帰国してすぐの日本の印象は、張り子の国。すくなくとも都会のありとあらゆるものが作り物に見える。郊外へ行く電車などに乗って山や川や田んぼをみるとはじめて、真実のものをみた気持ちになる。そこれで落ち着いて街に戻ると、もうなんの違和感も消えている。自分の知っている日常生活にすっと戻られる。それまでは、透明なフィルター一枚を通して世界をみている感じがする。不思議なことに、今もまだそんな感じがしている。現実に戻ることへの拒否反応みたいだ。


10-10-2008 / Friday

_ 昔の話などをいろいろと聞く。昔は、なるほど、そうだったのかと。

_ 植民地時代に大きな銀行であったところが、銀行丸ごと、そのまま博物館になっている。頭取室の立派な椅子や机やソファ。会議室、晩餐会室のシルバー類。なにもかもそのまま。さまざまな種類の小切手帳。思いがけず、横濱正金銀行の小切手を見る。歴代のスタンプ類。初代ATM。通貨の歴史もまた見られる。地下全面に広がる個人金庫や銀行の金庫。暑さ70センチほどもあろう扉の厚さ。ひいやりとした地下金庫には、無数に扉があり、どこからどこへ通じているのか、足を進める度に次の部屋で何を見ることになるのか、どきりとしたものだ。階上に上がって表に出れば、熱砂が体をとおりすぎた。生ぬるいジャスミン茶を一気にのみ、またバスに乗って、帰ってきた。人のいない博物館は、ふらりと入ってきた客と一対一で勝負してくれる。心して構えて歩き回ったから、ぐったりと疲れてしまい、久しぶりの昼寝は、深い深い眠りに落ちてしまった。


10-10-2011 / Monday

_ 氏子神社の秋祭りへ。母方の祖母の命日でもあることから、本当に長い間、この祭礼に足を運ぶことがなかった。今日は子どもを連れて出かける。御稚児行列は見逃してしまったけれど、その後の儀礼には間に合う。巫女さんが、笹の葉の束を使って、釜に沸かしたお湯を集まった人々に振りかけていくのである。お湯を振りかけてもらえば、向こう一年、無病息災に暮らせるという。子どもも静かに巫女さんの一挙手一投足に目を凝らしていた。儀礼が終わってから、図書館へ本を返却にいき、また金木犀の香りをたぐり寄せるようにして、家路についた。金木犀の花を少しだけ手のひらにとって、子どもの鼻先に近づけると、子どもはぷうーっと息を吹いて、全部飛ばせてしまった!元気でよろしおすな〜、と笑いながら今度は猫じゃらしを摘んで、子どもに持たせた。久々の日本の10月を楽しんでいる。


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