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  1. ね (09-20)
  2. ラギ (09-20)
  3. 雪見 (09-16)
lost luggages ねぶくろ 書簡
--sleeping bag・g-ism/ist--

12-09-2004 / Sunday [長年日記]

_ 『猫の客』平出隆(河出書房新社)。

自分のねこは飼っていないけど、餌付け猫の友だちがいたり、遊びにくる猫をかわいがっている人にはたまらない本。むかし某国で餌付け猫にしていたきなこを思い出した。おなかが減ると私の部屋まで階段を上がってやってくるくらいだったのに、あんまり抱かせてくれなかった。そしていつの間にか静かに消えてしまったねこ。

ねこをめぐる近所の人びととのつきあいやなくなってしまった庭園の風景などが、幻灯機を回すように浮かび上がってくる。ねこが来ないのをどうしたのかと思いつつ、新しい小鰺を用意しながら待っている夫婦が切ない。

_ ジュンパ・ラヒリのことをもう少しだけ書いておこう。

何かものすごいことが起こるわけではなく、どちらかというと目には見えないけど、大きな自然の流れ、敢えて書くと「運命」のようなものが足下の地中深いところにどっしりと流れているのかもしれないなあと思った。それは「運命」には逆らえないということではない。その流れはちょっと踏み外した程度では、決して「踏み外した」などとはいえない程に深く、幅があるのである。向こう岸などあるかどうかわからないくらいに幅広いのである。だからそんな川が流れているなど思うことなどないのである。しかし、なぜか川は静かに流れている。そして人は、その流れに時には流されているように見えて、案外、自分でも足をばたつかせてみたり、流れを横切ろうとしてみたりする、そんな感じがする。要するに、とても当たり前のことを、ひじょうに丁寧に書いている小説だと思うのだ。

私もどちらかといえば自分の名前が嫌いなので(両親の期待を背負っているわけではないのだが、他人からみればそう見える名前、しかし実は名付けの由来は私の誕生日にある、しかしそんなん、いちいち説明してられへんわな)、ゴーゴリ・ガングリーという名の主人公が、ニコライ・ゴーゴリーにちなんだ名前について、実際の自分とはなんの関連性も相似点もないにもかかわらず、「こんな人生を過ごした人と同じ名前なんて」と思う気持ちはよくわかる。

あと、一人称の小説に読み飽きた人は、とても満足すると思う。よくもまあこれだけいろいろな視点から書いていながら、ひとつにまとめられたものだとひじょうに感心した。とても完成度の高い小説だ。


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