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lost luggages ねぶくろ 書簡
--sleeping bag・g-ism/ist--

03-12-2005 / Saturday [長年日記]

_ 明日のくるり、ちょっと覗いてみようかなとか。

くるりは密かに好きなバンドだ。鉄道マニアで、眼鏡かけていて、ギターがうまいなんて。無愛想な声も好きだ。

まだ20世紀だったある日、別れて一年くらいたった先輩が東京で就職することになった。結婚しようという話も出ていたからか、少なくともわたしは、なぜそういう結果になったのかわからなかった。まだまだ相当に引きずっていたのだろう。引っ越しの最中のざわついている研究室にそっと入って、赤いリボンを掛けただけの「東京」を、机の上に置いた。なんだか若いね(笑)。

その人が上京して以来、会っていない。共通の恩師のお通夜でちらりと後ろ姿を見たし、そのとき遠くからこちらを見ていることも知っていたけど、もうそういう関係ではなかった。あの人はあのCDを一度でも聴いただろうか。

_ この日記を書くとき、文章を推敲することは、ほぼない。心中穏やかではいられないほどにミスタイプが多い人間なので、その修正はこまめにおこなうが、見落とすこともまた多い。さらには、読者を意識することもまったくなくなったので、読みやすい文章を書くということにも、注意を払わなくなった。その結果、文章を書くのがいっそう下手になったような気がしている。

なにを書くにせよ、メモ書きのように自分にだけわかればよいと割り切り過ぎると、だんだんと書く技術のレベルが下がってくるのだろう。

普段、メモを取るときは、わたしの場合はほとんどセンテンスで取っている(とかえらそうに書きますけど、同業の人、結構、キーワードで取っている人がおおいことを、つい最近知ったので)。単語やキーワードで取ると、あとからどうしても思い出せないことがあるからだ。センテンスで話を書き取るためには、最低限の目的語と動詞だけは押さえて、あとは割愛することになる。単語やキーワードで取るのとなにが違うのだといわれそうだが、少なくとも、わたし自身があとから読み返す段においては、まったく違う。掘り起こされる記憶の深さが違うとでもいおうか。

ときどき、たとえばお風呂で髪を洗っているときなどに、ある単語がフラッシュバックしてくることがある。昨日は「ペイガン」という単語だった。これはPaganのこと。英語で、「異教徒」「多神教徒」を意味する。別の言い方をすれば、一神教(キリスト教、イスラーム、ユダヤ教)以外の宗教を信仰するひとのことをさす。わたしはパガンという読み方で覚えていた。1ヶ月ほど前に、『結婚のアマチュア』(アン・タイラー)という小説を読んだ。少し不良ぶっていた長女が家出をしてヒッピーとなり、カリフォルニアのヨガ道場に身を寄せたと言う連絡を受け、夫婦が様子を見に行く。そこで娘が子どもにあらゆる体制から自由な名前をつけた聞かされる。それが「ペイガン」だった。そういう一連の記憶は、この1ヶ月の間に、すっかり忘れていたはずだった。それが、突然、わたしはそのあたりの記述を文章で思い出した。記憶の塊がぼろりとどこからか、剥がれ落ちてきたようだった。

そのあたりのくだりを読んだとき、リバー・フェニックスたち兄弟の両親もヒッピーだったなということを思い出したりした。兄弟の名前は、レインボー、エイプリル、リーフ…などがあるということも、何かの記述で読んだのだと思う。そういえばアヴリル・ラヴィーンも、フランス語の4月だな、ご両親はヒッピーだったのだろうか…というような、記憶の連鎖掘り起こし作業があった。その一方で、小説は読み続けていたので、すぐにそんなことも忘れてしまっていた。

それが昨日、なぜお風呂で思い出したのか。先日の出張の間、わたしはいくつかの宗教寺院を訪れた。歩いていて見つけたときは、かならず中に入ったし、写真も撮った。周囲の環境もすべてチェックした。移動中に見つけたときは、かならず地図で場所や環境を確認した。そういう作業をおこなっていて、一度ならず、頭の中に浮かんできたことばが、パガンだった。これは悪い意味ではない。とてもポジティブな意味で、多神教世界のことを語ることを考えていた。ちょっと楽しいことが書けるのではないか、と思ったのである。だから、旅の間の数日間は、妙に気分も高揚して、とにかく宗教寺院を探すことにエネルギーを注いでいた。

帰路にタイに寄ったとき、やはり似たような高揚感を得たわけだが、観光寺院をいくつか訪れたとき、そういう研究はもうすでに山のようにあるはずだという確信めいたネガティブな気持ちがわいたきた。欧米人の観光客に埋め尽くされた寺院の敷地の風景が、そう思わせたのかもしれなかった。さらにはわたしが思いつくくらいなのだから、といういつもの自虐的な気持ちになった。その途端に、すっかりとパガンをめぐる妄想は忘れてしまったのである。

それから10日余り。昨日、ハリー・ポッターをテレビで見ながら、ふと何かが頭の中で疼いた。途中でお風呂に入ったときに、やっとなにが引っかかっていたのかわかった。魔法界における宗教の位置づけ、である。冗長に書きつづるだけになりそうなので、割愛するけれど、きっとわたしの頭の中のどこかには、いまだ「パガン」ということばが残されていたのだろう。わたしはこのことばを、宗教の中で位置づけて解釈したいと思ったのではなかった。ネガティブな意味を付与されたことばとおもっていたけれども、別の角度からみれば、ことばの背景がちがってみえるのではないか。たとえば、魔法と宗教とを結びつけて考えることは、荒唐無稽かもしれない。しかし、あり得ない組み合わせをしてみることが、研究のおもしろいところのはずだ。。とまあ、ことばに書き起こしてみれば、大体、そのようなことを思いつくことになった。ちなみに、わたしは今まで宗教寺院の研究なんて、一度もしたことがないのである。況や、先月の旅先には人生で初めて足を踏み入れたのである。次にまた行くとも思えないのである、今のところは。

頭を洗い終えて、湯船に浸かりながら、大学にいなくても研究はできるのだから、自分のおもしろいと思ったことを調べるのは、なんだか楽しそうだなと思った次第。暗く鬱々としていたけれど、ありえない組み合わせの妙は、人を楽しい気分にさせるものだなと思った。

とまあ、久しぶりに意味のありそうな長い文章を書いてみたけれど、落ちなし、だなー。もうちょっと気合いをいれて、日記を書くように努めてみよう。


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