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lost luggages ねぶくろ 書簡
--sleeping bag・g-ism/ist--

14-01-2006 / Saturday [長年日記]

_ 10日ぶり。

いろいろあった。やはりちょっと体調を崩し、飛行機に乗って、外国人専用の病院のあるところに行こうと思ったのだけど、乗れないくらいにしんどくて、結局、地元で休養。幸いなことになんの病気でもなかったようで、5日ほど静養して、すぐに地方に出て、今日帰ってきたところ。

自分の大人度を試されるような出来事がいくつかあった。下宿先のお母さんが裏庭の木を切ろうとしていた。この木は、食用の実が取れる上に、若い葉っぱを野菜として食べることもできる。まだまだ元気な木である。これをなぜきろうとしたのかというと、燃料用の薪が足りないから。

ばかなことをしたのかもしれないけれど、私はちょっと大きな声を出してしまい、絶対に木を切っちゃだめだ、と叫んだ。それで、その場で財布を空にして、その木を買った。こういう自己満足なことは現場の人間としては、絶対にしてはいけないことなんだけど。一本の木をそんな値段で買う人間なんていないというくらい、財布をはたいた。ほとんど無意味な行動である。木を守ったという達成感はまったくなくて、あんなにわめかなくてもよかったのにという後悔だけが残った。それで夜は眠れず、明け方、早々と帰り支度をして街に出てきたというわけだ。

一日たって、気持ちの整理はなんとかついた。やはり木を買ってよかったと、むりやり思い込むだけの元気も戻ってきて、はあー、まあ、これでよかったか、と思っている。

木を切るのは簡単なのだけど、一本の木が大きくなるのにどれだけの時間がかかるか。ほら、この感傷がだめなのだ。このあたりの話、ややこしいので割愛するけれど、ただの感傷で言ったのではないのだということを、私は小一時間にわたって、近所の人々に説明することになって、最後にはなっとくしてもらった次第。ただ単に、お金があるから木を買ったんじゃない、木がかわいそうだから買ったんじゃないということ、屁理屈をつけてもっともらしく説明した自分が、あー、情けなくて、仕方なかった。こういうとき、どういうふうに、開発専門のひとは説明するのだろう。

ちょうど、先日、大きな山の頂上に生えている大きな木のあるところに行ってきたところ。その木の下には、13世紀ごろにあったという小さな王国の初代王と、その御付の従者、踊り子、楽隊が埋葬されているという。王が亡くなったとき、御付のものたちも一緒に埋葬されることを望んだという。そのあと、胸高直径5メートルはあろうかという巨木が生えてきた。樹高はおよそ50メートル。どこからでも見える。そこでこの樹がこれほど大きくなるまでにどれくらい晴れの日があって、雨の日があったのかと考えたりしたところだった。360度、見渡す限り、山の峰が続く。どこまでも山しか見えない。かすかに海がガラス片のように光って見える。麓の村では、夜となく、昼となく、王の楽隊のかき鳴らす太鼓や銅鑼の音、踊り子たちの歌声が聞こえてくるのだという。私がその樹の下に立ったとき、聞こえてきたのは郭公の鳴き声だった。郭公は、王の御付の化身なのだろうか。

そういう感傷が残っていたからか、私は一本の、薪にしてもどうでもええわと思われるような貧相な木を買った。胸高直径50センチメートルほどの木には、「わたしのもの:2006」と、ペンキで名前が入った。ばかばかしいけれど、亀を助けたり、ウサギを逃がしたりと、そんなことばかりしている。


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