_ ホテルの浴室で転倒して頭を床に打ち付けたのが1週間前のこと。しばららく脳震盪を起こしていたようで、気を失っていた。シャワーの水が冷たくなってから意識が戻った。直前になにがあったのかは、はっきりと思い出せた。水を冷たいと感じている。手足は普通に動かせる。よし起き上がろう。頭に手をやると、何ともいえない不気味な感触にふくれあがっているが、血溜まりは見えない。ゆっくりと、頭を左右、上下に動かしてみた。鏡に顔を近づけて、白目が見えるようにまぶたをひっくり返してみた。気分は悪くはない。寒い。爾来、休憩していた。タイルがぼろで、それほど頑丈でなかったのが幸いしたのだろう。それと生まれつきの石頭のおかげか。くも膜下出血という可能性もある。首都に戻ったら、一応レントゲンを撮ってもらおう。それまではまだなんとかなりそう。
けがとか病気とか、もう慣れっこになっているところがあるのかもしれない。気が弛んでいるのだ。浴室の床を濡らしたくなくて、シャワーブースから、タオルに手を伸ばしたときに、足を滑らせた。いつもはそんなことしないのに。ひたすら眠り続けた。疲れすぎていたから、これは休めということなのだろうと思って。