_ 某所でいろいろと話を聞き、そして大学へ大あわてで帰る。もう一体何年ぶりかわからないミナミ界隈。しかし少し離れると普通に住宅街があった。住吉の長屋。貴重な話。大学に戻るのに京阪特急に乗ってみる。沿線の風景が旅情を誘う。阪急とか国鉄とは全然ちがう。旅をしている気分になる。電車の中でテレビを放送していたり。乗り換えでおりた京橋駅。ジャージ・スタイルのアベック(カップルとかいう雰囲気ではないのだな、なぜか)が、抱き合っていたりするが、男、舎弟風でそり込みの頭髪、上下白で黒のラインのジャージ、片耳ピアス(舎弟的にはよいのだろうか)、女、サーファー風髪型、金髪、上下黒に金色のラインのジャージ。男の顔色は、肺病患者のごとき青白さ。見るものすべてが、どことなくアジア。おばちゃん集団などのけたたましいこと。ただの夫婦ものかもしれないけど、どことなくいかがわしい男女。普通のものが普通に見えない、なにか曰くありげにみえる不思議な世界。天王寺の駅の売店に山積みになっている赤福餅と、京都駅のみやげ物売り場の赤福餅とに、どんな違いがあるというのか。自分の目にかかるバイアスに驚きつつも、どこかガラス越しに見ているような距離感と。昼下がりの電車に乗る、悩ましい顔をした美男子の外回り営業社員が、これもまた舎弟の仮の姿風にみえるところなど、自分の発想が貧困過ぎるのか、シュールでディープな大阪のリアルなのか、日常の風景にいちいち目を見張りつつ出町柳で降りれば、ただの鴨川が見えた。