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lost luggages ねぶくろ 書簡
--sleeping bag・g-ism/ist--

16-07-2009 / Thursday [長年日記]

_ 先週読了したのは、『霧ふかき宇治の恋−新源氏物語』(田辺聖子、新潮文庫)。源氏物語の宇治十帖の現代語訳。光源氏と明石宮の娘である明石中宮の息子匂宮と、結果的には現存する光源氏の政治的には二番目の正室の位置についてしまった女三宮との間に生まれた源氏の次男薫が登場する話。薫は、実は源氏の実の息子ではない。女三宮と彼女に懸想していた柏木の間にできた子である。柏木は源氏の一番目の正室で亡き葵の上の実兄の息子。薫と匂宮の関係が面白い。このふたりは、宇治で隠遁めいた暮らしを送っている桐壺帝八宮(政治的に失脚、京の自邸が火事になったりで宇治へ越してきた)の長女大君と次女中君を我が物にせんとして、いろいろがんばる。そのいろいろがんばる姿が、昨今流行の草食系男子やら肉食系男子やらの対比そのままのように思われて、たいへん面白かった。

薫くんは、超生真面目な青年貴族である。あまりにも真面目すぎて、意中の大君とは結果的には超プラトニックな関係から先に進めなかった人である。がんばってある夜、大君の御簾の中に進入するも、自分よりは妹と薫を組み合わせたい姉のちょっとした策略にひっかかり、中君とひとつ寝床の中にいるという状況に陥った。ところが、薫くんは美女と一晩同衾していながら、その姉に貞操を誓い(心の中で)、なにも怪しいことをせずに朝を迎えて、ではこれにて失礼と帰っていってしまうような人である。

他方、匂宮くんは超強引。というか、薫くんとの対比でそう見えてしまう側面があってかわいそうなのだが、少々、強引な普通の男子である。欲望のあるがままに、自分の宮中での社会的政治的地位も忘れ、恋する人にまっしぐらなタイプ。薫くんは、歌を詠めばロマンティックというよりは自分の真剣さをわかってくださいよ、と懇願するような感じだし、しかし押し付けがましいのは相手に迷惑だろう、などと思ってしまうタイプ。いつもどこか憂いを帯びた人生観にとらわれており、いつかきっと仏門に入ろうと、まだ若いのに信心深く、護摩を焚いたりするのに勤しむことも多い。

だから草食系というわけでもないのだけど、そのように分類される人々は、いつの時代にもきっといたのだろうなと思ったりした。如月さんは、とてもよくシカに似ている。お肉よりも野菜とか魚が好きだし、甘いものに目がない(シカは塩気のほうが好きかな)。大きくなったバンビのような感じの人で、いつもふわふわと歩いている。わたしの話を否定することはほとんどなく、「なるほど、ふむふむ、だいじょうぶだよ、気にしないで」という単語を、ときどきわたしの一方的なおしゃべりにリズム感よく挟み込む。それ以外は、目をきらきらとさせながら、じっと話を聞いているタイプ。しかし、趣味の活動の話になると俄然活力が湧き出てきて、滔々と話し出す。趣味の活動の会合などでも、いつも書記長をしていたりする。その土地の風土に適合するような草食系の人々は、いつの時代のどこの場所にもきっといるのであろう。


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