_ 山の上にいた間は、毎朝5時半に起きてお湯を沸かしてもらって行水をして、水田地帯を散歩するのを日課としていた。休耕田で牛の家族が草を食べているのを見るのが楽しみで、毎朝、坂を下りた。一時間ばかり、灌漑水路を辿って畦道を歩いて、ときどき急峻な岩肌をのぞかせる山を見上げたりしては、鳥や小動物の鳴き声に耳をすませた。早朝にも甘いコーヒーの花の香りはあたりに満ち満ちており、時々、花を摘んでは蜜を吸った。よく公園のツツジなんかの蜜を吸っては母に叱られたものだ。
最後の日の午前中は、家の裏の窪地の水田へ。盆地の向こう側は厳しい岩肌を見せる崖山である。そのふもとに小さな灌漑が切ってある。この灌漑水路は向こうに小さく見える滝が水源。村から滝へは歩いて15分くらいという。本当はこの滝も見たかったのだが、岩場をよじ登っていくらしい。また今度にする。白いウルチマイのほか、紅米も栽培しているここのご飯は、しっかりとした噛みごたえがあって、本当においしかった。高収穫品種のハイブリッド米はお米も痩せていて、経済的にはよろしいのかもしれないが、食べておいしいものではない。もちろん炊き方にもよるのだろうが。いろいろたくさん話を聞いたし、散歩もたくさんできたし、知りたかったことも知ることができたので、満足して帰路についた。途中、一か所だけ、どうしても寄りたかった開拓村へ。干からびた西部劇の村のような雰囲気で、人相の悪い保安官ならぬ痩せこけた赤い色の犬が吠えるでも威嚇するでもなく、あくまでも感じ悪く近寄ってきて、いきなりころりと足元に寝転がった。番犬としてのつとめを少しは果たしましたよ、というポーズなのか。
戻ってちょっと料金のことで運転手ともめて、あとの時間は知人に又貸しして帰る。疲れた。翌日は半日、横になって、午後になってから外出。小旅行の報告を友人にして情報交換。
その次の日からは海抜0メートル地帯へ向かう。打って変って、暑いこと、暑いこと。いろいろ話を聞いて寝て食べて、お墓の掃除などもしたりして、3日後に無事帰還。
最後はチャイナタウンでいろいろと人に会って話を聞いて、のんびり珈琲飲んだり月餅を食べたりしてなんとか情報収集して帰る。途中、お寺で何度も籤を引きなおす。というのは、籤を解釈してくれる人が「これはよくない」というので。最初の二回はともに65番で大凶。安産祈願をした人にとってはまったくよろしくない結果。ということで解釈のおじいさんの助言に従い、再度、三拝九礼して籤を引いたら大吉が出た。ええんかいな。
荷物まとめて空港へ向かうところ。明日から三日間、また大学でシンポジウム。少し風邪気味で、喉と鼻が猛烈に痛い。扁桃腺が腫れて鼻水が止まらない。疲れ果てたけど、ミジンコさんも喜んでいたと思うよと夫に話したら、「楽しんでいたのはあんただけやで」と冷たく言われた。そうかな。まあとにかくすんごい充実した小旅行でした。あとは書くだけ。それがむずかしくってねえ。。