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lost luggages ねぶくろ 書簡
--sleeping bag・g-ism/ist--

27-03-2011 / Sunday [長年日記]

_ 研究室代わりに使っていた部屋の片づけで大学に来ている。道中、考えていたこと。今回の被災の状況が、激甚地震津波による破壊的な状況であることを考えれば、今、「復興」ということばを現実化する方向で動くのは早急であるように思う。もちろん政府や地方行政は、そのことを把握しているはずだと思う。少なくとも、向こう二カ月間(災害発生から大体3カ月間か)を、緊急救援支援期だとすれば(これは一般的な災害における考え方なのだけど)、仮設住宅をどこに建設するかという問題には、かならず、今後の防災対策をいかに配置するかという問題の解決が伴われなければならない。都市計画と防災対策の両方ということ。個別の町や市が、独自に取り組むという考え方では、追いつかない自然災害があるということが、今回わかった。なのだから、災害対策インフラのハードな部分に関しては、広域地域連合的な発想で取り組むべきではないかなと思ったりする。いわゆる通常の「復興」ということばが、今、被災している人から発せられているのだとすれば、それはきっと、まだ今回の被災の全貌を誰も捉えきれていないからでもあるし、希望を失ってはいけないという必死の気持ちでもあるだろう。グラウンド・ビジョンがまだ建てられない段階での、急ごしらえの「復興」「復旧」は危険だ。それに今回の災害からの「復興」や「復旧」は、元の状態にプラスアルファといった内容では、足りないのである。本当は、今、まだボランティアが現地に存分に入っていけない時点で、こういった議題をどこかで話し始めていたほうがいいんじゃないかとも思う。少し落ち着いてきた段階で、復興計画の大筋を政府や地方行政に伝えて検討を始めて、まだ決まっていなくても、その議論の進捗状況は、逐次、被災社会に伝えていく。そうすれば、少しは被災地の人びとの気持ちも、落ち着くのではないだろうか。。こういう話をすれば、本当に一時的に避難すべき人も、現在の「避難場所」を後にしやすくなるかもしれないし、「避難場所」を運営管理している災害時リーダーの人たちも、すこしだけテンションを緩めることができるんじゃないかなと思った。

家をなくす、生業の基盤をなくす、人間関係の基盤をなくす、というのは、ほんとうにたまらないものだ。わたしは、程度の差こそあれ、このすべてを全部経験したから、今、被災地にいる人びとが直面している苦しみを、少しだけわかってあげることができる(んじゃないかなと思う)。しばらくは、なくしてしまったもののことばかり考えて、空っぽになってしまうからだ。現実的に考えて、わたしが今までの自分のアカデミックな経験を、今回の災害に際して社会的に貢献というのか還元する機会はないと思う。そういう場を、今のわたしはもたないからだ。でも、一個人としては、できることはあると思う。そう思いたい。北国の春は遅くやってきて、夏も短いのだろう。でも、その短い春と夏の間に合わせて咲くような花を、被災地に送ってあげたい。種を播いてもよい。木を植えてもよい。毛布とかミネラルウォーターばかりでなく、いい匂いの石鹸や保湿クリーム、きれいな刺繍をした巾着や爪切りや綿棒。そういうのを欲しいなと思っている人がいるんじゃないかなと思って、後方支援活動をするしか、わたしにはできないなあと思っている。なにしろ、自分の生活が崖っぷちなのだから。東北の人と一緒にがんばっていくしかない。

_ 行政もいっぱいいっぱいで、なかなか手が回らないのだろうし、被災者へのボランティアだけでなく、本当は行政を助けるボランティアも必要なのだけど、まだその段階まで到達していないのだと思う。だから、疎開する人と避難所に残る人の間の心の調整ができなくなってしまっている。本来、今すぐにでも「疎開」すべき状況にある人(高齢者、妊婦、乳幼児がいる人、その他どんな事情であれ、その被災者自身が別の場所に行く必要があると感じている場合)は、なんの後ろ髪も引かれずに、直ちに心と体を休めることのできる場所へ「避難」すべきなのだけれど。これを書いているのは、今朝の朝日新聞のウェブ版の記事を読んでのこと。一旦、避難所を出たら、もうここへ戻ってくるなと言われることもあって、厳しい状況だけど、なかなか「避難」できない人もいるという内容だった。こういう社会的二次災害が発生する可能性があることは、神戸での震災の時もあったはずで、少しは経験の蓄積はあったのではないかと思う。でも、今度の場合は神戸の経験が生かせる部分とそうでない部分がかなりある。ひとつは、都会と地方というコミュニティの背景の違い。地方の農村や漁村の地縁社会にしっかりと根ざした社会関係のあり方が、よく機能する場合もあれば、そうでない場合もある。そういう背景を熟知したような、たとえば社会学者だとか文化人類学者とかが、過度に同情しすぎない距離をしっかりと保ったところから、コミュニティの社会的復興に向けて助言できるような環境にあればよいのだろうけれどと思う。ああ、ほんとうにどうしたらよいんだろうか。。

まだ確かな被災状況がはっきりしない中、救援・支援ボランティアでさえスポット的にしか現地で活動ができない状況下では、もうそろそろ考えていかなければならない部分が、いっぱいいっぱいになって、疲弊してきていると思う。避難している人の精神的ケアはもちろん必要なのだが、行政や心理ケアとは別の視点からかれらにコミットする人が必要になってきている。そして、日本人であろうがなかろうが、地方行政をサポートする人員。公務員の被災者の人たちも、もう限界をとうに越えてしまっているのではないかと思う。

この苦境を一緒に乗り越えようというのが、巨大エネルギーになってうまく行く場合もあれば、一旦、メンバーそれぞれが落ち着いてから再結集してがんばろうという方向がよい場合もある。むずかしいなあ。

わたしがこの問題を調整するコミッティのメンバーだったとしたら、まず考えるのは、有無を言わさず、もっと安全で快適な場所に移住すべき人を、ひとまず避難させることだと思う。それから、災害時一心同体に強く執着してしまうような状況下にある人たちと話をして、誰一人欠けるなというしんどい気持ちをうまくほぐすことだろうなと思う。誰一人、後ろめたく思う必要はないのだから。ほんとうは。

こういうニュースが一番、突き刺さる。

 


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