_ 幼馴染は年子の二人姉妹だった。三人で遊ぶから、いつもキャンディーズごっこ。顔が似ていたから、幼馴染はランちゃん、その妹はミキちゃんの役。わたしはスーちゃんだった。三人で歌って踊った日々には、もう帰れない。今でも、あの頃、レンゲを摘んだりアリの巣を襲撃した原っぱの跡地に建ったマンションの前を通ることがある。あのころのわたしたちの影を探してしまうことがある。ときどきテレビでキャンディーズのメンバーをみかければ、必ずあのころのことを思い出した。これからは、もうあまり思い出さなくなるだろうか。いろいろなものを失くしながら、年を取っていくのか。その分、得るものもあるかもしれないが、いつも探してやまないものは、今ここにはない。過去にあったのか、未来にあるのか、それすらもわからなくなって、混濁してきた今を生きている。霧が晴れる日がもし来たら、思いっきりキャンディーズを歌ってみたい。わたしの代わりに行ってしまったスーちゃんの弔いのために。