_ 保育園の前の通りの銀杏の黄色が美しい。朝は青い空に映えて、夕べは真っ暗な空を背景にまるで灯りのようにきらきらと光っている。銀杏の美しさは、その立ち姿の凛々しさと関係があるようだ。桜や紅葉が一期一会的な美しい絵画のようなドラマ性のある姿でわれわれにさあこれでもか、これでもかと攻めてくるのに比べると、あっけらかんとした風情がある。桜も紅葉も好きなのだけど、銀杏のこの凛々しさについては、なんともいえない清々しい気持を感じるほどである。桜や紅葉とは違って、街中の景観の一部として存在する銀杏並木。何十年も生きてきて、今さらのようにこの美しさに感じ入っているのは、たぶん、自分もそうありたいとか自分の姿と重なるところがあるとか、その手の陳腐な感想が基底にあるのである。所用で大阪の南の方に出かけた帰り、ふと思い付いて御堂筋を歩いた。ああここにも、林立するビル群に映える凛々しい銀杏があるのだ。ひとり空を見上げながら、寂しいような楽しいような、そんな気持がしたのだった。