_ 「1号線を北上せよ」(沢木耕太郎)。ー誰にだって、人生の1号線を北上するときがあるーというようなことばが、最後の方に出てくる。その言葉を折に触れて思い出すことが多かった2012年だった。一気に再読した。沢木耕太郎はホーチミンから北上してハノイを目指したけれど、わたしはハノイから南下してホーチミンを目指した。あの旅での自由さを、懐かしく思うことがよくある。特にハノイの朝。何を食べるかも決めずに、毎日、人がもくもくと、白い息を吐きながら食べている屋台を見つけると、わたしも風呂の椅子のような小さな椅子に腰掛けて、ー同じものをーという万国共通のジェスチャーで注文して、いろいろなものを食べた。楽しかった思い出しかない旅というのは、なかなか珍しいことだから、よく思い返すのだろうか。もちろん小さなごたごたはいくつかあった。でもそれも含めて、徹頭徹尾、楽しい旅だった。またいつかぜひ行ってみたい。今度は子ども連れで。