_ ネルソン・デミルの『王者のゲーム』を図書交換会で入手したのがおよそ一年前のこと。先日、ホテルに泊まりに行くときに、思い出して持って行った。プールサイドで読み始めたら、もうやめられなくて、結局、夜通し、さらには泳ぐのも忘れて読み耽ったのだった。ときどき子どもがいることを思い出して、なんとか自制心を絞り出したものの、なんともなんとも。やめられない小説というに久しぶりに出会った。ただ、すごくよくできた小説とはあまり思わない。というのは少し都合がよすぎる点が散見されるため。例えば、小説の結末部分。運よく主人公とヒロインが敵の魔手から逃れることができた点。本当に都合がよい。それといかにも、いかにもな、才色兼備、射撃万能の会計士かつ弁護士である女FBI捜査官の人物造型とか。ケイ・スカーペッタみたいな人物というのは、アメリカでは普通にいるということなのだろうか。
そういった些末な、何も持たない一読者の平凡な日常からは到底想像し得ない人物が活躍する小説となると、プールサイドで非日常的な怠惰な時間を過ごしながら読むにふさわしかろうと思うのも当然だろう。現代の西部劇を読んでいるような躍動感があった。面白かったんだけど、ごにゃごにゃと思うのはなんでだろうか。続きももちろん読みたいです。続きを書くために、犯人を生かしたのだろうから。