_ 旅行に持って行く本は、二種類ある。一冊は金子光晴の『マレー蘭印紀行』、もう一冊は、宮本常一の『忘れられた日本人』。新しい小説は、長い時間飛行機に乗るようなときに、空港でペーパーバックを買うことが多い。
金子光晴も宮本常一も、なんとなく自分のポジショニングのために、持っていっているような気がする。別段、ナショナリストでも日本文化至上主義者でもないのだが、遠くまできちゃったな、という感慨に浸るには最適な本かとも思う。金子光晴の足跡を辿ったときにも、もちろん持参した。
という話をしたら、仕事場の同僚にも、この二冊を持っていく人が多いことがわかった。どちらもさほどに厚くないし、何度読み返しても、どこから読み直しても、問題もない。帰国するときは、どこかに置いてきてもよい。そいうわけで、本屋でみかけると、ついつい買い置きしてしまうようなこともあって、苦笑してしまう。そろそろ、準備しておかねば。