_ ちょうだい、というと、はい、といって、なんでも渡してくれるようになった。お人形を抱っこして、かわいいかわいいと、あやすようにもなった。毎日少しずつできることが増えてきて、大きくなっていく。着物がどんどん小さくなっていく。寝ているときも、起きているときも、子どもは毎日初めての新しい経験をしている。わたしもがんばらねば。がんばらねば。がんばらねば。
_ 子どもを抱っこ紐に入れて、迷路のように入り組んだ路地から路地を通り抜け、ときおり太陽の位置を確認しながら方角を確かめ、図書館を目指した。自分の街なのに、知らないことがたくさん。生まれてからこの方、都市ガス生活しかしたことがなかったのだけど、路地裏から覗いた家の裏口には大きなプロパンガスが並んでいた。プロパンガスって、背が高いのだな。
_ 大学。仲良しの先輩とカレー屋でお昼。スパイスが利きすぎていて、おいしいとか風味がどうのこうのという次元を通り越していた。互いの近況報告。どちらも話せることも限られているのだけど。
_ 節分の鬼の役を仰せつかった理由は、出来上がりが少しちいさい目になった鬼のお面を被れるのが、保育園の同じクラスのだれよりも小顔で頭も小さい一休さんだけであったからだという。鬼のお面を被った子どもを抱いて、春節の夕方を南南東へ歩いて帰った。
_ 恵方巻きの三分の一を与えられた子どもは、台所の床に座り込んで、日頃は許されない作法で大胆に食べ散らかした。小鬼そのもの。寿司飯だらけの手足の子どもと湯船に浸かると、もう底に足がついて、立つことができた。その瞬間の子どもの大得意の顔ときたら!!