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  1. ね (02-27)
  2. 雪見 (02-26)
  3. 寝 (02-21)
lost luggages ねぶくろ 書簡
--sleeping bag・g-ism/ist--

09-02-2004 / Monday [長年日記]

_ やっとこさ帰ってきました。

とにかく楽しいという一言につきる旅路でありました。初めて訪れる国でなんとか無事に英語は通じたものの、電車の乗り方やレイルパスの仕組みがいまいちわかっていなくて、ずいぶんと心細いスタートを切りましたが、ようやく宿を決めて日の沈んだ雪道をころころを引いて、地図を片手に歩いていたら、いきなり「どこそこへいく道を教えてくれないか?」という展開。ちなみに、昨日、最後の宿を引き払って駅に向かう途中にもまったくおなじ質問を受けた。どこからみても旅行者で外国人だということは、その場所への行き方をしらないのではという懸念を抱かせるには物足りないということなのだろうか。たしかに、どちらの国も、普通に歩いている人でバックパックを背負っていたり、ころころを引いている人がたくさんいたし。

吹雪で塔から落ちちゃうんじゃないかという気がして仕方がなかったベルリン、奇岩の城塞が見えては隠れるエルベ川、誰も歩いていない日曜日の夕暮れのプラハで道に迷ってもうあと少しで泣きそうになったこと、レストランに入っても思ったモノが食べられなくて悲しかったこと、パンダをみたこと、蝸牛のぬいぐるみを買ったこと、洋梨型シュタイフも買ってしまったこと、あとは歯止めがきかなくなって、ツボやらお皿やらこまごまとしたものを買い散らかしたこと。夕暮れの街をトラムに乗ってずっと走ったこと。ボヘミアの林の中で電車が止まってしまったこと。考えてみると二日に一回は人に道を聞かれたり、アンケートに答えるように求められたりで、あまり外国にいる感じがしなかったのも事実。ごーごーと音とを立てて流れていく川を見ながら食べたソーセージのおいしかったこと。ウラジミールさんの親切。我が家の前の道を角のところで曲がれば、あの街のどこかにさまよいこんでしまうんじゃないかとさえ思ったりする。

ただいま。

_ ウラジミールさんは、ベルリンからプラハへ向かう列車の中で隣合った人。息子さんがPhDを取りにフィンランドへ行くのを見送りに行った帰りに乗り合わせた。荷物を網棚に挙げてくれたりしてくれたのだが、一挙手一投足がとにかくさりげなかった。有名な国際資本の会社の重役とのことだったか、プライベートの旅行には二等車を使うようで、運良く私と乗り合わせたのだった。宿を決めていないこと、私たちが乗った列車が着くのは本駅ではなく、そのひとつ手前が終着駅だということで、午後はまだ早いとはいえ、なにか心当たりがあったのかもしれない。国境を越えてインスペクターやら警官やらが一通り旅券をチェックした後、携帯電話を数カ所にかけて、私に話しかけてきた。「社の会議などで使うホテルが駅前にある。割引50%で17ユーロ、朝食込みだけどどうする?」。

値段のことはともかく、本駅まで移動してから宿を探すのは正直面倒だと思っていたので、すぐにお願いした。親切に地図を書いてくれたり、その日の午後の見所、明日の見所などをさくさくと教えてくれる。といっても押しつけがましいところはひとつもない。

駅に着くとさっさと私の荷物を引いて、まずは両替、トラムの券の購入などてきぱき。もう一度地図の確認をしてよい旅を!といって握手して別れた。この出会いがなければ、プラハの思い出がどうなっていたか、想像するだに恐ろしい。

_ ベルリンの3日間を一緒に歩いた仲間といい、ウラジミールさんといい、よい旅の道連れがいたことが旅を一層に思い出深いものにしてくれたような気がする。

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]

_ 雪見 [おかえりなさい♪ 充実した旅行でよかったですね。 洋梨型シュタイフってどんなんだろ。興味津々。]

_  [ただいま!洋梨型シュタイフはですねー、数ある野菜・くだものシュタイフの中でも一等かわいく、エスカレーターで売り場に着..]


10-02-2004 / Tuesday [長年日記]

_ 旅行中はいくつもの美術館や博物館に足を運んだ。なかでもベルリンで見たものが一番記憶に鮮明。自分の原点ともいうべきデッサウDessauのバウハウス校舎には今回いけなかったが、そのかわりベルリンのバウハウス美術館を訪れた。長い年月をかけてようやく一巡したなあと感慨深かった。絵画館、ユダヤ博物館もほんとに充実した内容と展示で、すこしでも博物館に関する仕事をしたことのある人であればほんとに興味深いものだと思った。退屈…ということばはついぞ浮かばなかったところがすばらしかった。

_ あと印象的なことは「音」について。駅でも、電車の中でも、百貨店の中でも、人の声以外に何も音がないことがよくあった。だからこそ街角の人形遣いの奏でる音楽が鮮明に聞こえるのかもしれない。冷え切った大聖堂の中では、人の声がさざ波のように聞こえる。音がないことで、音がより一層顕在化するという経験は、日本ではなかなかないことかもしれない。

_ あとは森の多さ。都会からほんの数分電車で走るだけで、林や森が見える。そういうところを鉄道が走っているだけなのかも知れないが、それにしても風景が楽しかった。西洋絵画の色彩が、いままではなんとなく理解できないでいたのだけど、実際に自分でその風景の中に立ってみると、これほど忠実な色彩の再現もないものだと思ったりした。思いがけず、巡回美術展でゴーギャン、ルノアール、モネを観賞することになったり、一枚の絵の前で、心ゆくまで座っていることができたり、一分一秒を十分に楽しんだ気がした。また是非とも、行ってみたい。


11-02-2004 / Wednesday [長年日記]

_ ひたすら寝まくり。これが時差ぼけというのだろうか。夢の中では音楽が聞こえていた。スカボロ・フェア。なぜかと頭を巡らせて納得。

_ 明日からやらないといけないことが山ほどあるのだけど、丁寧にひとつずつこなしていこう。着物も選びに行かないといけない。2月よりも3月の方があっという間にすぎてしまいそう。スケジューリングミスだけはしないようしなくちゃ。

_ 郵便で送った荷物はまだ届いていません。。。絶対にだいじょうぶという確信はあるのだけど、やっぱり心配だにゃ。


12-02-2004 / Thursday [長年日記]

_ 久々に学校へ来て、用事を済ませて、人としゃべったり、なんだかんだこなす。

向こうの方の山がもわっとした眠たいような色合いになっている。春なのだな。

_ 今日のお洋服:というか、旅行中前半はがんばっていろいろな組み合わせに挑戦していたのに、後半はずっとおなじ服を着ていました。

今日は、黒のボートネックセーター、グレー地の大柄の花模様スカート、ブーツ。コートを着ていったら、暑かった。


13-02-2004 / Friday [長年日記]

_ 昔、ピンポンパンに、「ぶちゃねこ」というネコの人形が登場していた。それにそっくりなキジトラネコが庭を悠々と横切る場面に出くわす。どちらが住人かわからないほどに悠然とこちらを見遣るぶちゃねこ。初めて見る顔だ。どこへ行くのかわからないけど、きっと彼/女にはわかっているのだろう。

_ 朝、旅行のフィルムをカメラ屋に出したら、その本数だけ新しいフィルムをくれた。でも27枚撮りの400って、とっても使いにくいよ。その分、安くしてくれてもいいのに。絵はがきサイズにプリントするのが流行なのか、それは一枚30円。対して、一回り小さいL版が35円というのが解せぬのだ。

_ デジタルで撮影した写真はとても自分が撮影したとは思えない美しい仕上がりで、少し驚いた。やっぱりカメラはレンズ?

_ 今日のお洋服:ピーチオレンジのシャツ、黒のセーター、明るい茶色のプリーツスカート、黒のジャケット。感想:ところどころ、春。


14-02-2004 / Saturday [長年日記]

_ 両親はバレンタイン旅行でカニを食べに。で、この悪天候の中、買い出しにも行けず、留守番。なにかおかしい。

_ 荷物着きました!一段落ついたら、シュタイフとか絵はがきみたいな写真とか、どこかでちらりと見られるようにしたいと思っています(大体1ヶ月後くらいになるか)。

この天気なので、カメラ屋にも行けない。


15-02-2004 / Sunday [長年日記]

_ やっと旅のメモの整理を終わらせた。レシートとか入場券とかパンフレットをノートに貼り付けて、メモ書きをして本棚へ。絵はがきばっかり買っている感、否めず。

_ 西洋人の子どもはなんとなくちいさな大人みたいな顔つきをしていて、怖いなと思っていた。温泉のある街へ向かうバスの中で、座っている私の目の前の席に乳母車に乗った1歳くらいの女の子がいた。笑っていないときは実にまじめくさった顔つきでこちらを凝視していたのだけど、ふと私が笑いかけると、それはもうかわいらしい笑顔できゃっきゃと喜んだ。そうなるとどこの世界の子どももみなかわいいもの。その女の子はお姉さんやら両親やらと新しい方の温泉に、私は古い方の温泉に入った。あの子も温泉に浸かったのかなと考えながら、案内に従って、料理されるように分刻みで茹でられたり蒸されたりした。

_ 最後にボディミルクを塗りつけて毛布にくるまれて居たときに、今でないと多分、バスに乗れないという確信を得て、ものの15分ほどで脱皮。慌てて走る。温泉の帰り、すでに猛吹雪。超特急に乗るために一旦反対方向の駅へ向かい、食糧とコーヒーを慌てて調達して、滑り込みセーフで着席。遠回りをして近道をした。下りる駅に着くと外はまだ雪。とりあえず駅構内の売店で熱いコーヒーを飲んで様子を見てからようやくあきらめて、すっかり夜の冷気が立ち込めている道を宿に向かい、俯き加減に歩いていた。歩いているうちにいつのまにか雪は止み、霧が立ちこめていた。自分の足音を聞きながら歩く。石畳の道がT字路になっているところで、ふと横を見上げた。視界一杯に、大聖堂が飛び込んでくる。塔のてっぺんは霧で霞んでみえない。その光景は圧倒的としか表現しようのないものであった。他になんといっていいのかわからない。もう少し大聖堂に近づくと、店屋の看板もなにも視界に入るものはなくなり、石畳の端を静かに流れる用水路の水音しか聞こえなくなる。時計が正時を指し、鐘が鳴った。どれくらいじっと見上げていただろうか。旅程を通じて、この時の他に今、自分は外国にいる、と強く思ったことはなかったような気がする。目を閉じても閉じなくても、あのシーンはもう正確に甦ってくる。

記憶の断片が、ノートを整理していると次から次へと掘り起こされてくる。その度にガイドブックを読み直したり、地図を広げたりして、なんども歩いた道を反芻した。誰かと一緒だったらもっと楽しかったかもしれないと思うことは、食事の旅に思ったし、タイムテーブルを読み間違って夕暮れの道を宿に向かっているときなどは、とくに思ったものだった。それでも今回の旅は楽しかった。何が楽しかったのかと聞かれれば、それは多分、私は私でありさえすれば、それでよかったからではないかと思う。なにも背伸びする必要はなく、髪の毛がぐちゃぐちゃでもずっと同じ服を着ていても、なにも気にすることなく、ただ毎日を楽しむだけでよかった。それが日本ではできないというわけではない。まだまだ楽しいことはいくらでもあるのだと思えたことが、なにしろ楽しかったのだろう。


16-02-2004 / Monday [長年日記]

_ バウハウス美術館で買った図録を見ながら寝てしまう。もう次は絶対にデッサウ。自分の中ではバウハウスブーム再来である。あと真っ白な陶器の深皿にブルーオニオンのお皿が敷かれていたのが、妙に目に焼き付いている。あの組み合わせはなかなか思いつかない。おしゃれとかそういう次元を越えて、ひたすらかっこよかった。

そういうわけで、今私が考えているのは、AとBをつなげるとしたら、どういう方法があるかということ。一見想像だにできない事象の組み合わせが、新しいものの見方を生み出すということをいう先生がいた。今ならその気持ちがわかる。無理をどうすれば、可能にかえられるか。しばらくは頭の体操が続きそう。

_ フィルムで撮影した方の写真があがったので見てみたけど、がーっかり。やっぱりお天気が悪かったから、色が悪い。まあしかし見たままの色といえば、それに間違いはなく。お天気もわるいだろうしなあと思って200にしたのが中途半端だったみたい。しかし、良くも悪くも「冬色」に仕上がっていた。一眼レフにすればよかったかなと一瞬思ったけど、おおきなストロボをつけない以上は、自然光頼りにはかわりなかったし。

_ 今日のお洋服:深緑のフェルトジャケット、黒セーター、グレーの花柄スカート。感想:チロリアンですね、と言われる。


17-02-2004 / Tuesday [長年日記]

_ 昨日のお昼は旅行のおみやげを渡しがてら、久々に「家族」と待ち合わせて、生協で。ひさしぶりーとか、げんきぃー?とかいうあいさつも抜きで、「さあ、今日はなに食べよかー」と切り出すだけの居心地のよさ。いつものように食後はカフェーの方に移動して、だらだらとしゃべる。脱力感に浸ったまま研究室へ戻れば、血相を変えて飛び込んで来る人がいる。曰く、今日あるはずの研究会にまだだれもきていない、場所はどこに変更になったのか、という。そんな研究会があることも知らなかったので、誰が話す予定なのかを尋ねれば、私も出席して然るべき御歴々の名前である。仲間はずれにされたのかと一瞬思ったのち、(ま、やることたくさんあるし…)と考え直して思いつくまま、会場となりそうな場所を挙げる。その人(外部から来た人!)は疾風のように去っていった。ふと、メールの受信箱を確かめてみると、をを、会場はいつものところではないですか。悪いことをした。

_ 人の研究を聞くのは楽しいけど、ま、王道から外れたところをとぼとぼ歩いている方が気楽でいいなあという気が最近強くなっている。誰もやらないけど私にしかできないことをこつこつとする時期なのかなと思ったりする。理由付けているだけなのかもしれないけど。

_ 今日のお洋服:ピーコックブルーのシャツ、黒セーター、緑系キルトスカート、黒ジャケット。感想:そういえば昨日はガチャピン(ポンキッキの)みたいと言われた。


18-02-2004 / Wednesday [長年日記]

_ 学位授与式に着る着物の見立てを母と伯母のふたりがしてくれるとのことで、ちょっとたいそうなことになってしまった。本人よりも周りのほうが浮き足立ってきた。ま、うれしいことである。「遠方より来たる」の人もいるので、これはひょっとすると人生最大の慶事になるのだろうか。しかしそれがこんなことでは、ある意味、私の人生も実につまらない、味気のないものである。ツチノコを捕まえた!とか、金鉱を掘り当てた!とか、そういう類のことが起こると面白いのだが(でも、生涯、「ツチノコを捕まえた寝袋さん」という修辞がついて回るのも格好悪いかも)。

_ 帰り道に新しい独文翻訳小説1冊、岡崎京子2冊、高野文子1冊(安全剃刀)、推理小説(って古いことばなのかも)1冊。奇しくもこれで二冊続けて人物すり替えもの。『火車』(宮部みゆき)『白夜行』(東野圭吾)まではこういうことが知らないところで起きているのか…というまさに背筋が凍るような思いを楽しんだものだった。『幻夜』(東野圭吾)はどういう筋立てかわかっていたけどやっぱり怖かった。今読んでいるのもすでに早い段階ですり替えものの伏線が明らかになって、これから佳境に入るところ。怖い本を読むと、夜、部屋の灯りを消して眠るのが怖くなるところがいやだ。だけど、読まずにうちやって仕舞うわけにもいかない。それなのに、今日、危うく『獄門島』を買いそうになった。この本を仮に無事に読了できたとして、部屋においておくだけで怖くて眠れないのではないかと思いとどまった。市川昆監督の横溝ものは大好きで、実はDVDボックスも買おうかな…と一瞬考えたのだけど、一人ではとても見られない。複雑な人間である。

_ トラ子女史と昼食を摂ったお店。もう二度と行かない。客の意向を察知する意欲のないウェイトレスさん。あの店は早晩、閉店に追い込まれるのではなかろうか。角っこのお店はそれに引き替え、店員さんも愛想がいいしお店の雰囲気も明るい。コックさんが無愛想なのと対照的で、実はこの人たちは夫婦かもしれない…と常々想像している。こんな奥さん、欲しいなあと私も思うくらいだ。


19-02-2004 / Thursday [長年日記]

_ 夕方、うちの周りを歩いているとどこからかふんわりと花の香りが風に乗ってやってくる。をを、もうとっくに梅が咲いているんだ。夕方は少しずつ長くなっているし、このくらいの季節はほんとにいいなと思う。別になにかうれしいこととかがあったわけでもないのに、足取りも軽くなる。

期待していて小説は、ちょっと冗長で、途中を少しだけ飛ばしてしまった。高野文子は『黄色い本』とは全然違う作風で、ちょっととまどい気味。そういえば、『チボー家のジャック』、函入りのを買ってある。これも読まなくては。映画もどんどん、行こう。

_ てっきり今日は金曜日と思っていたので、三連休とか勝手に思いこんでいたら、まだ今日は木曜日なんだ…。

_ ううーん。唸るしかないメールが来て、慰めるとも気晴らしともいえないことしか返事には書けないまま、送信。一緒に喜ぶことは簡単なのだけど、哀しみを一緒に受け止めることはやっぱり難しいものだ。こういうとき、私は「健康第一で」としか言えない。あとは「たっぷりと泣く」ことを勧めることだけ。泣けばお腹も減るし、眠くもなる。我慢するのが一番よくないのだけど、我慢しないという誘惑に打ち勝つのは実は難しい。ぎゅっと抱いてくれる人がいると一番いい。しかし、そういう人がいてもいなくても、泣くのは悪いことではない。我慢しないで、とだけ書いて送ったけど、我慢強い人にはますますプレッシャーとなってしまうだろうか。ままならないなあ。


20-02-2004 / Friday [長年日記]

_ 伯母と待ち合わせて三人で着物屋さんへ。反物の染めもしている小さなところなのだけど、知る人ぞ知るお店だったらしい。町屋のその一部屋に入った瞬間、母が「NHKのお香講座の人」とつぶやいたが果たして、そこが衣装を担当することもあるのだという。へえー。

なんやらかんやらと色を合わせたりなんやらかんやらと柄を合わせたりして、どれを着るか決めた。伯母が中心人物。お代も払って、車で送ってもらって観梅。まだもう少しという感じ。さて次は…と歩いていたら、母のふたごの妹と偶然出会う。もう一人の叔母。女きょうだいが揃ったところで、お茶。叔母は別の約束へ行き、また三人でバスに乗って、母たちが少女時代を過ごした家を見に行く。

…ここは、だれそれさんの家だった…ああ、まだだれそれさんのお祖母さん、いたはるわ…、という話をしながらずっと歩く。道幅が広くなったとか、商店街のどの店が昔からあって、どの店がなくなってしまったとか、一人で歩いていたら絶対にわからない話をいろいろと聞く。年を取っても、小さい時のことって忘れないものなのだな。私はずっと先になって、誰にどんな話をして、小さいときに住んだ街を歩くのだろうか。ふと楽しいような、気恥ずかしいような気持ちになった。

_ 晴れ。3月下旬並のお天気だとか。冬が季節の中で一番好きだと公言している以上、もう少しだけ続いて欲しい気もするのだが。

予算消化でいろんなものを、思い切らずにばんばんと買う役目を仰せつかっている。正直なところ、心が痛む。今回は、まったく私の裁量で使い切ってもよいので、できるだけ有意義なものをたくさん買う作戦。せめてもの救いである。

_ な・る・ほ・ど。。。

結局、人間はずっとずっと、おなじことを繰り返すようにできているんだろうなあ…。案外、あっさりと突き止めることができて、私の捜査能力もまんざら捨てたものではなかったとか思ってみたり。ふとなんとなく、自分に向いている職業は探偵ではないかと思ったりする。ただし、興信所のようなのではなく、たぶん、金田一耕助みたいにフリーランサーの探偵だ。石坂浩二の金田一耕助が一番、かっこよかった。水戸黄門になってしまったときは、少し悲しかったもの。やっぱり市川昆の横溝もののDVDが欲しいなあ…なんてことを考えた。池波正太郎の時代小説にしばしば、「現在でいえばフリーランサーの○×である」という表現が出てくる。おまさほど色気も美貌もないが、頬被りをして小物行商風にうろうろするのは、自分にはぴったりじゃないかと思ったりする。未来に行きたいとはあんまり思わないのだが、鬼平さんとか秋山小兵さんなんかいる時代には行ってみたいなと思う。ずっと気にしないでいたのだけど、幽霊の正体みたり…で、とりあえず昔年の課題は一件落着した。

というか、私もずいぶんと立ち直ったものである。極めて、冷静。


21-02-2004 / Saturday [長年日記]

_ ラインヘッセンとイタリア(赤)を買って、お呼ばれ。夕方、デパート経由で帰宅。もう何年も前からひいきにしているアクセサリー屋さんで、見ちゃったんだな、どうにもかわいいベネチアン・グラスのイヤリング。淡水真珠そっくりのと、ぱっと見にはわからないけどうすい赤銅色のきれいなのとふたつ。お呼ばれに持って行ったのとおなじワインをもう一回買って、帰宅。卒業式のために。今日していったイヤリングはいつものお店のもの。イヤリングでも探すとかわいいのがある。このふたつのお店はとくべつのひいき。かわいいもの好きはつとに知られたところであるが、今日会った友だちに、今までに買った(がらくた)の総計を考えると血の気が引くという話をしたら、彼女のとびきりの(余計なもの支出)のヒミツを教えてくれた。。。完敗。約束なのでここには書かないが、その支出を思えば、私のイヤリング収集など耳垢以下である。

_ 汽車を待つ君の横でぼくは時計を気にしてる/季節はずれの雪が降ってる

東京で見る雪はこれで最後ねと/さびしそうに君はつぶやく(なごり雪/イルカ)

_ 中学一年のとき、一日だけフォークギター部だった。新入生の練習曲は、チューリップの心の旅か、なごり雪だった。もちろん、リアルタイムで流行っていたからだということではなく、コード進行が明快だったからではなかろうか。。。ふと、思い出して、なんとなく声に出して歌ってみたりした。今でもフォークギター部なんてものが存在するのかどうかわからないけど、今だったらゆずとかそんなのを練習するのかな。今、フォークギター部員だとしたら、練習したい曲はOasis のWhatever。

フォークギター部に入らなかった理由は思い出せない。その後、理科部を経てバスケットボール部に入って、一学期でやめた。やめた理由は確か怪我だったような気もするし、そうでなかったような気もする。

明日、寒いのかな。

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]

_ 雪見 [中学のときギターを買ってもらいました。 ぽろんぽろんと練習したんだけど、予想外に指が痛いということがわかり めげてし..]

_  [ギターって、ふと、魔が差したように弾きたくなりますよね。 ピアノもそうなんですけど、より発作的に襲ってくるような気が..]


22-02-2004 / Sunday [長年日記]

_ 衣替え。

_ 年を経るごとに頑なになる人がいるよね…と、昔、私の顔を凝視しながらいう友だちがいた。それでも好きな友だちだった。久方ぶりにあってみると、そつのなさを今でも維持していることにむしろ感心した。私はとうの昔にいろんなこだわりを捨ててしまっている。「すてき」「素敵」「ステキ」の使い分けに関する独自論展開とか、「かれ」「カレシ」とか。文学少女気取りだったので、うるさいことを言っていたような気がする。結婚している友だちも来ていたが、その彼女が友だちの配偶者のことを「ご主人様」と呼んでいることの違和感とか、話したいことはたくさんあったような気がするが、言えば「それがどうした」と言われることも想像できたので、ふむふむと聞いていただけ。時間が流れて、距離ができたんだなということを確認するために会うことは悪いことじゃない。それで会わなくなるということでもない。

私ができるだけ姿勢正しく歩こうといつも心がけるのは、彼女からいつも「歩くときはあごを引いて、お臍を中心に力を入れて、おしりを引き締めて」と言われ続けていたからだ。昨日会った彼女の歩き方は、昔の私の歩き方に似ているような気がしないでもなかった。私は「ズボンばっかり履いてないでスカートを穿くように」と言われ続けていたので、この数年はスカートばかりはいている。言われてすぐにそうなったわけではないが、いつも心の何処かで引っかかっていたのだろう。年も取って、いろんな方向をきちんと目を開けて見ることができるようになると、スカートはそんなに寒くないこと、ヒールのある靴をたまに履くと、背筋がすっと伸びることなどを発見してからは、いろんな洋服を楽しむようになった気がする。社交的な性格になったかといえば、それはまだまだ改善の余地があることかもしれないけど、私はもうこれでもいいなあ、と思っている。高校を卒業して何年も経つと、結構いろいろなことが変化する。

結婚した友だちがすっかり家庭人となって配偶者や子どもたちについて語るのを聞くのも、嫌いじゃない。人は本質的に「家庭的」であるのか、あるいは結婚が人を「家庭的」にするのかを考えるのも、面白いなと思っている。もし自分に子どもがいたら行きたい場所は野山の他には美術館。ベルリンの絵画館で、ちびっ子が胸の前にだっこ紐みたいなもので前向きに抱えられて、お母さんと一緒に絵画鑑賞しているのを二組、見たからだ。ちびっ子にはなにがなんだかわからないかもしれないし、面白い絵の前ではきゃっきゃと笑うかも知れない。怖い絵の前では泣くかも知れない。あのだっこ紐は美術館謹製なのだろうか。意味もなく、欲しい。


23-02-2004 / Monday [長年日記]

_ 写真、確かに小さすぎますね(笑)。撮りなおしますね。

_ 今日はなんかへんなお天気だ。あれこれと領収書を計算したり、追加でお使いに出かけたり。ウラジミールさんにもようやく御礼の手紙を出した。日本手ぬぐいの素敵なのがあったので、それも同封。ちゃんと届くといいのだけど。

昨日はカレル・チャペックの伝記も買ったりして、旅から戻ってきてからの方があれこれと本を読んだり調べたりするのに熱心になっている。マイレージがどれくらいたまっているのか調べてみたら、余裕でもう一回行けるくらいになっていた。一回分のチケットを確保しているわけだから、今度は違う季節の街を違うルートから回ってみたいなと思う。そういえば今電車の中で読んでいる本は、カフカ短編集。旅から帰ってきてもまだ旅は続いていて、次に別の旅を見つけるまでは前の旅が続くのかもしれないなと思う。


24-02-2004 / Tuesday [長年日記]

_ 合格発表の日だったのか。本部に行ったらあちらこちらで下宿のパンフレットを配っている人びとに出くわす。で、私にも「どうですかぁ〜」とにこやかに渡してくれる青年ありき。

1.合格した新入生に間違われたのか♪、2.付き添いの人に間違われたのか、3.合格した人の「母」に間違われたのか…。

ま、なんでもよいのだが。

_ あれー。大事なノートがなくなったー。まずい。。


25-02-2004 / Wednesday [長年日記]

_ ほこりっぽい日。風邪の引き始めみたいで、喉がいがいが。ああ。。。

温かいおうどんでも食べて、元気をださねばー。

_ というわけで、おろし生姜たっぷりのあんかけうどん、おひたしを生協で食べて、お茶飲んでくつろいでいると、ますます喉が痛くなっているような気がしてきた。いかんなー。鼻うがいでもした方がいいのだろうか。


26-02-2004 / Thursday [長年日記]

_ すんごい肺活量がアップした気がしているのですが、つまりそれはより多く花粉を含んだ空気を吸い込むことができる…ってことかと、遅まきながら気がついた。ひょっとして、私は墓穴を掘ったのだろうか。

_ 昨日は帰りしなに天然塩を買い、すぐに鼻うがいをしてみた。まさかこれで溺れる人はいないだろうが、一瞬、その恐怖を味わう。しかし、一回薄い塩水が鼻を通ってみれば、それはダイビングのときの耳抜きと同じで、「なんだ、こんなに簡単なことだったのか」というものであった。そんなに鼻が詰まっている訳ではなかったが、鼻うがい後の異様なまでの風通しのよさに、それとは意識しないうちに長い時間をかけて、その状況に慣れてしまっていたから気がつかなかっただけなのだろうかという恐ろしい考えがよぎった。

そういえば随分長い間、潜っていない。海が懐かしくなった。

_ もう何年も前から母に、スプリング・コートを買うように言われているのだが、今年は買った方がいいのかもしれない。この時期にこれだけ暖かいと、毎朝、何を着るか困ってしまう。

ギンガムチェックのオーヴァーブラウス、黒のコール天パンツ。素材と季節感のあっていないちぐはぐな格好。蒲生邸事件を読む日。

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]

_ 雪見 [ひえ、鼻うがいってそういうものなんですか。 プールで泳ぐときいつも鼻に水が入って苦しい思いをするんですが そしてあれ..]

_  [雪見さん、おもしろすぎます〜。 鼻うがいはどうやら、鼻から薄い塩水を吸い込んで、口から出すみたいです。 私は鼻から吸..]


27-02-2004 / Friday [長年日記]

_ おととい、私が本部でみた「おかあちゃん、もしくはおとうちゃんと学生さん」の組み合わせは合格発表を見に来た人びとではなくて、二次試験の下見に来ていた人びとだった模様。。。試験て、普通はひとりで行くものだと思いこんでいたので、今さらながらに驚いた。観光も兼ねてのことなのだろうか。

(上記のことがわかったのは、新聞の二次試験問題を見てのこと。わたしも、「なんかへんやなあ」とは思っていた。うきうき感が足りなかったので。自分がうきうきしていただけのことだった模様。なぜ自分がうきうきしていたのかは、わからない)。


29-02-2004 / Sunday [長年日記]

_ Leap year; therefore, "I love you."

_ 夕べは友だちと外国語レストランで食事。雰囲気も食事もとてもよかった。お客さんにも外国語人の人がたくさんいて、外国にいるみたいだった。よくしゃべったので一皿サービスしてもらって、食後のコーヒーもおまけしてもらう。マネージャーのこなれた日本語が素晴らしかったので尋ねてみると、やはり日本人の奥方がいらっしゃるとのこと。また行きたいなと思うのだが、お店の中に負けないくらい、お店の外の雰囲気が(怖い)外国の雰囲気である。絶対に一人では行けない。用心棒と一緒ないしは団体客として、今度は行ってみたいなと思った。


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