_ 旅行中はいくつもの美術館や博物館に足を運んだ。なかでもベルリンで見たものが一番記憶に鮮明。自分の原点ともいうべきデッサウDessauのバウハウス校舎には今回いけなかったが、そのかわりベルリンのバウハウス美術館を訪れた。長い年月をかけてようやく一巡したなあと感慨深かった。絵画館、ユダヤ博物館もほんとに充実した内容と展示で、すこしでも博物館に関する仕事をしたことのある人であればほんとに興味深いものだと思った。退屈…ということばはついぞ浮かばなかったところがすばらしかった。
_ あと印象的なことは「音」について。駅でも、電車の中でも、百貨店の中でも、人の声以外に何も音がないことがよくあった。だからこそ街角の人形遣いの奏でる音楽が鮮明に聞こえるのかもしれない。冷え切った大聖堂の中では、人の声がさざ波のように聞こえる。音がないことで、音がより一層顕在化するという経験は、日本ではなかなかないことかもしれない。
_ あとは森の多さ。都会からほんの数分電車で走るだけで、林や森が見える。そういうところを鉄道が走っているだけなのかも知れないが、それにしても風景が楽しかった。西洋絵画の色彩が、いままではなんとなく理解できないでいたのだけど、実際に自分でその風景の中に立ってみると、これほど忠実な色彩の再現もないものだと思ったりした。思いがけず、巡回美術展でゴーギャン、ルノアール、モネを観賞することになったり、一枚の絵の前で、心ゆくまで座っていることができたり、一分一秒を十分に楽しんだ気がした。また是非とも、行ってみたい。