_ 秋から冬にかけての夕方、わたしの部屋がオレンジ色に染まる時間が好きだ。南側と西側の窓から差し込むオレンジ色の光に、どれだけ慰められ、うっとりとした時間をすごしてきただろうか。誕生日の頃は、夜になると、羽衣ジャスミンの香りが二階の部屋にまで忍び込んできた。うぐいすの鳴き声を温かな布団の中で聞きながら、いつまでも微睡んでいた春の朝。冬の朝、窓の外の冷たさは、光の色で推し量ったものだ。灰色の朝、グレーの朝、ねずみ色の朝。博論を書いていた年の秋から冬にかけての部屋。一日中、二胡や波多野睦美を聴きながら、オレンジの花の香りを混ぜ合わせた加湿器のコプコプという蒸気の音に包まれていた。家はどこにもいかないだろう。いつまでも、いつまでも、わたしの記憶の中にある。ありがとう、わたしの家。