_ 子どもが持って行ったオリーブの苗木は、みんなが植樹祭をしてくれて、クラスの花壇に植えてくれたという。子どもはまだ訳が分からないだろうけれど、かあちゃんは自己満足的にうれしかった。
わたしが就職できたということはみなとても喜んでくれているのだろうけれど、いつまで続くだろうか…と思っているところはあると思う。それはことばの端々から感じられる。悲観的な見方をしているとかシニカルに見ているからそうなのではなく、わたしに関してはみなそれぞれに不安を感じているのだろうと思う。ここには一度も書いたことはなかったけれど、数年前に父の会社が倒産した。夢にも思わないような出来事であったため、家族だけではなく親戚も含めて、みなたいへんな時期を過ごした。バブル時代もその後の低成長の時代も、ずっと盤石の態勢で来ていた会社だったのがなくなるなんて、誰も思わなかった。それで文字通り、なにもかもなくした。家族も離散した。その後、縁あって結婚して、子どもが生まれて、人並みの生活のようなものができるようになった。それでもずっとたいへんだった。細々と大学の研究を続けてきたけれど、それももう無理になって、新しい方向転換をして、びっくりするくらいの薄給だけど、なんとか仕事も見つかった。これからもずっとたいへんだと思う。なくしたいろいろなものも、もう二度とは手に入らないだろうし、人との距離感も決定的に変わってしまった。
明日、わたしは日本を後にする。もう帰って来られないかも知れない。でも今日で一旦、死んだつもりになろうと思っている。明日の朝、起きたら、また新しい人生を始めようと思っている。今度はもう少し幸せになろう。そう思っている。
行ってきます。