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lost luggages ねぶくろ 書簡
--sleeping bag・g-ism/ist--

09-08-2014 / Saturday [長年日記]

_ あと3週間で新学期が始まる。先月初めに、新学期に担当する教科を決める会議があった。わたしが担当することになったのは初級文法復習、中級作文、論文の書き方指導。ネイティブだけど、会話とか聴解とかは担当しない。まずわたし以外の先生が自分が担当する科目を選んで、わたしは残りを割り当てられた。そういう決め方で別に構わないのだけど、はっきり言って、ネイティブ講師を本当に必要としているのだろうかと、何百回目になるかわからないけれど、また思った。日本語教師としてはまだまだ初心者だから外されたということなのかもしれないけれど、担当教科の決め方だけでなく、いまだに待遇関連の諸問題が片付いていないという事態からしても、一体、何のために採用されたのだろうかと、つくづく不思議な気持になってきている。

そういうこともあって、相変わらず、ぱっとしない毎日である。だから先日は、子どもを連れて気分転換にホテルに泊まりに行った。プールのあるところだったので、毎日、たっぷりと朝食を取ってから、ずっと泳いでいた。一体、一日何時間泳いだろうか。ホテルの部屋はふつうのとてもシンプルな造りの、清潔な部屋だった。クーラーもセントラル・クーラー?なので、切るか入れるかしかないタイプ。バスタブだってないような部屋なのだけど、おそろしく寝心地のいい部屋だった。子どももわたしも、泊まっていた4日間、、昼寝もたっぷり3時間寝て、また夕方から夜まで泳いで、晩ご飯を食べてシャワーを浴びたら、翌朝、7時まで、一度も目を覚ますことなく、ぐっすりと眠った。水泳で疲れているということもあったかもしれないけれど、本当によく寝た。

今日は、お昼前から子どもと一緒に餃子を作った。こちらで人気のロシアのマンガで「マーシャとミーシャ(マーシャとくま)」がある。子どもは最初、保育園で見て、とてもおもしろかったそうで、買って買ってとうるさく言うので、海賊盤のDVDを買ってみた。すると、なるほど、子どもが好きな理由がわかった。登場人物で人間は、推定4歳くらいのマーシャのみ。それ以外の登場人物は全員動物である。で、セリフがあるのはマーシャのみ、動物さんたちは全員、ウーとかいううなり声かセリフなしのボディランゲージ。セリフや挿入歌は、米国版海賊盤では英語に翻訳されていて、ロシア語版海賊盤ではロシア語。子どもは、ロシア語版を繰り返し繰り返し見た結果、「ロシア語が話せるようになった」と、宣言するようになった。例えば、わたしが誰かと子どものことを話していて、「・・・それが、いまだに保育園では日本語でとおしているようです・・・」と、某国語で言うと、すかさず子どもは、「違うねん、○○ちゃんはロシア語やったら話せるねんで。みんながロシア語、できへんねん」と日本語でいうのである(つまり、某国語はわかっているわけです!)。で、餃子なのだが、マーシャのマンガの中で、くまの甥っ子のパンダが登場する(くまの甥がパンダという設定だそうです)。パンダくんも推定年齢3−4歳の子どもである。このパンダくんとマーシャとミーシャが、一緒に餃子を作るという話がある。子どもはこれを見て以来、自分も餃子を作りたいとずーっとうるさくうるさく言うのであった。それで今日、一緒に皮から作った。途中、マーシャが麺棒を華麗に操るシーンを自分もやりたいというのを、必死に制したり、疲れ果てた餃子作業であったが、とても楽しかった。子どもはお料理が大好きで、キュウリの浅漬けやらエビフライやら、なんでも自分で作る。これからは餃子もレパートリーに加わったので、わたしも大変なのですが、いろいろたくさん一緒に作ろうと思っている。

そういうわけなのだけど、このマーシャのマンガは、ものすごくよくできている。まず第一に、子どもがとても子どもらしく描かれている。もちろん、いたずらの数々は、あり得ない内容のものも多いのだが、子どもをとてもよく観察している人が制作しているようで、いたずらマーシャの動作やら仕草やらが本当の子どもがやりそうなことばかりなのである。一緒にこのマンガをみる大人は、現在進行形の育児の中で、いやー、これまったくウチの子と一緒やわ−!、と引き込まれてしまうのである。マーシャのかずかずの悪行を見守る、引退したサーカスのくまさんは、決して、子どもを頭ごなしに叱るのでなく、適当に同レベルで仕返しをしたりしながらも、基本的には温かく見守っている。くまは本当はおじさんくまなのだが、母親のようにやさしく(そしてちゃんとヒステリーを起こしながら)見守るのである。このくまさんは、料理がうまく掃除洗濯は完璧、ピアノもすごい、化学実験も得意、編み物や洋裁ももちろん、という人。で、きれいな女のくまさんがくると、突然、花束やチョコレートを用意してデートに誘うとか、そういうところもある。お父さんとお母さんの両方を兼ねているのだろう。

いろいろな登場動物がいるのだが、わたしが好きなのはパンダくんと、極めて人相の悪いオオカミさんたちである。オオカミさんは二人組で、丘の上に停めた壊れた救急車の中に住む、医師と看護師あるいはふたりとも看護師(か保健師かなにかそういう医療従事者)。基本的に動物たちは全員、マーシャに翻弄される役割なのだが、このオオカミさんたちも人相の悪さに似つかわしくなく、完璧に遊ばれている。・・・というように、わたしもすっかりとこのマンガを楽しんでいる。浮き世の憂さ晴らしにぴったりというわけではないのだけど、しばし、現実を忘れるのにはとても素晴らしいマンガである。ちなみに、Youtubeでほとんどすべての話を見ることができる。「マーシャとくま」で検索すると、出てきます。


17-08-2014 / Sunday [長年日記]

_ 高校では夏休みに作文とか創作物(小説・詩・戯曲など)とか小論文などなどを書く課題が、現代文の宿題として出された。わたしは一年生と三年生のときに、課題が選ばれて掲載された。選ばれるのは基本的に各クラス一名だったと思う。なので、毎年、30数編のさまざまな散文やら創作物を編集した文集が出されるのであった。一年生のとき、ひとつ上のサッカー部の人のエッセーがわたしの文の隣に掲載されていた。映画に関するものである。ジョージ・ロイ・ヒルという映画監督の作品についての、短いけれど、とても気の利いた素敵なエッセーだった。わたしはこのとき初めて、映画監督について書かれたエッセーを読んだのではないかと思う。とにかく格好いい文章で、文体だった。「スローター・ハウス5」、「リトル・ロマンス」そして「ガープの世界」について書かれていた。わたしは全部、映画を観たいと思った。しばらくして本屋に行くと、たまたまなのかどうなのか、ジョン・アーヴィングのスペシャル・コーナーが設えてあった。そこで、わたしは「ガープの世界」を買ったのだった。

それからいつ映画を観たのだったか、もうはっきりとは覚えていない。でも、とにかくT.S.ガープ役を演じたロビン・ウィリアムズの、愛嬌があるのに、どこかしら少し寂しげなあの口角をきゅっと上げた笑顔というのか悲しい顔が好きになったのだった。彼の出演した映画を全てみた訳ではない。でも、それ以来、ジョン・アーヴィングを読むたびに、妄想の登場人物の誰かひとりに、かならずロビン・ウィリアムズを配置したものだった。頭の中のBGMはいつもどんなときも、When I'm 64(ビートルズ)。「ガープの世界」の主題歌だった。彼がいなくなって、本当に寂しい。

「私一人」。ベティ・バーカル/ローレン・バコールの自伝を買った日のことも、とてもよく覚えている。6月のある大雨の日、文字通り、本当に貯金箱を割って小銭を掻き集めて、夕方、ひとり電車に乗って大きな本屋まで行った。映画コーナーで見つけて、背伸びしてその本に手を伸ばした指の感触まで覚えている。白地に青で書店名が入った、今では考えられないくらい洒落たカバーを付けてもらい、我慢しきれずに電車のなかで読み始めた。何度も何度も読んだ。ボギーとローレン・バコールには特別な思い出があった。ローレン・バコールには100歳くらいまで、生きていて欲しかった。でも今頃は、ボギーに再開して、ふたりで楽しく素敵な時間を過ごしていることだろう。胸が締め付けられるような死が続いて、少し寂しい8月となった。


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