_ 滅多に乗ることはないのだけど、夜行バスに乗るのが好きだ。動き出すときや、停車するとき、あんなに大きな車体なのに、意外な静けさでスケートしているみたいな感じになるからだと思う。昼間の景色の方が断然、見ていて飽きないのは事実として、夜は家々の灯りがついて、それがまた楽しい。のぞき見の一歩手前かもしれないけど、オレンジ色の灯りにちらりと目を走らせると、家族団欒や一人の食卓が見える。
金子光晴の足跡を追う旅をしたときも、そんな感じだった。華人系の家ではかならず、夜になると赤いランプが灯る祭壇が設えてある。ここにもあるな、あそこにもあるなと、バスの窓から灯りが走っていくのを見ているうちに眠くなったりする。
夜の旅は船に限るな、とも思う。甲板にきゅうきゅうに詰まって、空を見上げながら旅をしたことがある。新月の夜だったので、プラネタリウムみたいだった。時々、星が海にすとんと落ちた。
_ 本を読んでいたら、いつの間にか机のランプだけが点いている状態になったので、ふと、思い出した次第。
_ 夜汽車は乗るのも好きだけど、夜中にふと目が覚めたときに、汽笛が聞こえたり、線路の継ぎ目をがたごとと通り過ぎる音が聞こえてくるのが好きだ。この頃は、もうそういう機会はすっかり少なくなってしまったけども。
_ 首が長い女の人って、きれいに見えるなあ。わたしは猪首ではないけれど、猫背気味なので、首が短く見える。。もう10年くらい前に、美容室のお姉さんに、「あなたは首が長いし、足の甲も高い(甲高ではあるが、幅広・扁平ではない)から、きれいになろうとする努力次第よ」と、いささか唐突気味に言われたことがあった。美容室は、市内には、あちらこちらに支店を持つが、どちらかというと堅実な奥様、もしくはおばはんをターゲットとしたところであった。わたしは、ただ家から近いというだけで、そこに通っていただけだった。そのお姉さんは、その美容室のほかの美容師さんたちに比べると、少々、垢抜けしていて、無駄話をしない人であった。だから、お姉さんの助言は、もしかしたら、わたしの受け止め方次第では、啓示というのか、ものすごく意味のあることばだったのかもしれない。しかしながら、当時のわたしは、人のことばは270度くらいにひねって受け止めるのが好きであった。だから、うれし恥ずかし思いつつ、でも恥ずかしさを出すこともせずに、ふん、という感じで聞き流したのだった。
今、某国で毎日、強烈に忙しいけれど、健康に堅実に規則正しく過ごしている。もちろん、精神の静寂は未だ訪れず、いつも動揺しているかおっっかなびっくりか、はったりかましたれー、という毎日でもある。それでも他人から見ると、随分と変わったらしい。やせこそしないけれど、毎日のヨガもどきの体操と菜食主義(でも昨日は、羊とサカナを食ったが)のおかげで、健康そうに見えるらしい。健康というのは、「太っている」の隠語としてこちらでは使われている。なのでまだ太いわけだが、髪型が大きく変わったので、受ける印象が違うらしい。つい3ヶ月前に初めて会ったような人が、久しぶりに会うと、まあ、あなた雰囲気が全然かわりましたね、、などという。幸せというのからはほど遠い逆境にあるけれど、それなりに安定しているということなのだろうか。毎日、一度は、辛いことがあって、泣くことも多い。しかしそれでもどこか相変わらずのどんぶり勘定人生のおかげで、なんとか均衡が取れていると言うことなのだろうか。人に言われるほど、幸せではない。それにもかかわらず、暮らしていける。それこそが幸せということなのだろうか。よくわからないけど、今は、バイクで思い切り飛ばして、気に入った風景があれば、そこで止めてお絵描きをするのが楽しい。小さな幸せだ。確かかどうかはわからないから、小確幸とはいわないけどね。
_ とりあえず、無事に帰国。帰国便への乗り継ぎの国内便が3時間あまり遅延。シティチェックインをしていたので、待ち時間は1時間弱で済んだが、査証有効期限最終日だったこともあり、乗り継ぎ空港へ到着したら日付を超えてしまっていた。もちろんオーバーステイの罰金など払うつもりはないし、それは空港会社が責任を持つものだという姿勢を最初からきちんと示したので、余分な料金など払わなかったが、他の人たちはおとなしく払っていたようだった。おとなしく払わなかったわたしと子どもは、若干、他の人よりも長い時間、出国審査の別室に拘束されたのだけれど、イミグレの係員はちゃんと航空会社の係員を呼んで事情を説明してくれたし、比較的あっさりと手続きを進めてもらえた。しかしすべてが終わったときにはもうとっくの昔にボーディングは開始されており、余裕でラストパッセンジャーになっていた。子どもはその間、ずっと寝ていてくれた。迎えにきてくれた母と一緒に、一息つくため二度目の朝食をゆっくり食べてから帰宅。2ヶ月という時間は長いようでもあり短いようでもあり、いろいろと出来事があった。もうちょっと深く突っ込めたかもしれないこと、もう一歩前に進めたかもしれなかったこと、もう少し我慢してみれば違う展開になったかもしれなかったこと。。いろいろなことがあったけれど、今はもうそれでよかったんじゃないかなと思う。過去を振り返っても仕方がないわけで。前を向いてとりあえず進んでいくしかない。
_ pyonpyon21 [おかえりなさいまし!まずは旅の疲れをとってください。]
_ ね [pyonpyon21さん、ただいま。ありがとうございます。 日本はお天気もよく、のんびりとゆっくりと過ごしています。..]