_ 学位授与式に着る着物の見立てを母と伯母のふたりがしてくれるとのことで、ちょっとたいそうなことになってしまった。本人よりも周りのほうが浮き足立ってきた。ま、うれしいことである。「遠方より来たる」の人もいるので、これはひょっとすると人生最大の慶事になるのだろうか。しかしそれがこんなことでは、ある意味、私の人生も実につまらない、味気のないものである。ツチノコを捕まえた!とか、金鉱を掘り当てた!とか、そういう類のことが起こると面白いのだが(でも、生涯、「ツチノコを捕まえた寝袋さん」という修辞がついて回るのも格好悪いかも)。
_ 帰り道に新しい独文翻訳小説1冊、岡崎京子2冊、高野文子1冊(安全剃刀)、推理小説(って古いことばなのかも)1冊。奇しくもこれで二冊続けて人物すり替えもの。『火車』(宮部みゆき)『白夜行』(東野圭吾)まではこういうことが知らないところで起きているのか…というまさに背筋が凍るような思いを楽しんだものだった。『幻夜』(東野圭吾)はどういう筋立てかわかっていたけどやっぱり怖かった。今読んでいるのもすでに早い段階ですり替えものの伏線が明らかになって、これから佳境に入るところ。怖い本を読むと、夜、部屋の灯りを消して眠るのが怖くなるところがいやだ。だけど、読まずにうちやって仕舞うわけにもいかない。それなのに、今日、危うく『獄門島』を買いそうになった。この本を仮に無事に読了できたとして、部屋においておくだけで怖くて眠れないのではないかと思いとどまった。市川昆監督の横溝ものは大好きで、実はDVDボックスも買おうかな…と一瞬考えたのだけど、一人ではとても見られない。複雑な人間である。
_ トラ子女史と昼食を摂ったお店。もう二度と行かない。客の意向を察知する意欲のないウェイトレスさん。あの店は早晩、閉店に追い込まれるのではなかろうか。角っこのお店はそれに引き替え、店員さんも愛想がいいしお店の雰囲気も明るい。コックさんが無愛想なのと対照的で、実はこの人たちは夫婦かもしれない…と常々想像している。こんな奥さん、欲しいなあと私も思うくらいだ。