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lost luggages ねぶくろ 書簡
--sleeping bag・g-ism/ist--

08-10-2005 / Saturday [長年日記]

_ 別段、落ち込んでいるわけでもなんでもなし。ただ、今ごろになって、ようやくテロに遭わなくてよかったと思えるようになったということ。バリ島のときも、ニューヨークのときも、一日の差で免れた。生きていてよかったと思うのみ。生きていてよかった。

_ 初めての海外旅行に出かけるとき、搭乗してベルトまで締めた飛行機が、機体不良とかで飛ばなかった。空港近くのホテルに泊めてもらうことになり、一応、自宅に電話した。両親は、すぐに帰ってきなさいと言う。だんだんと不安になってきたのだが、同行のクラスメートはだいじょうぶ、だいじょうぶ、と意に介さず、さっさと寝てしまった。翌日、飛行機は無事に飛び立った。その日、深夜に目的地に到着したとき、機内ではみなが拍手をした。

そのとき、タラップを降りて、初めて経験した外国のにおいが忘れられなくて、未だに旅をしているのかなと思う。甘いにおいと、独特の香辛料のにおい、そして夜のにおい。その旅のことはほぼ忘れかけているのだけど、タラップを降りたときのことだけは、今でも不思議なくらいに鮮明に覚えている。自分の来ていた服、足が少しむくんでひもがきつくなったスニーカー。今ほどに明るい照明ではなかったのか、空港の周囲の様子はまったくわからない。白タクのようなものの値段交渉をしたのはクラスメートだったし、どこに泊まるかを決めたのも彼女だった。外の様子がまったくわからないままに、車は走り出した。暗闇の中で手探りをして、倒れ込むようにベッドに横になった。翌朝、目が覚めたのは表の道を通り過ぎた馬車の鈴の音のせいだ。明るい日差しの差し込む部屋を見渡したとき、ああ、外国に来たのだなと思った。どうやって街中に出たのかはもう覚えていないけれど、朝食を食べそびれたわれわれは、適当なレストランに入った。旅慣れた友だちは、さっそくローカル・ディッシュを選んだ。私はどこかにまだ弾けきれないところがあって、悩んだ末に、スパニッシュ・オムレツを頼んだ。もちろん、友だちの選んだもののほうがおいしそうにみえた。

本当は旅が好きなわけでもなく、楽しんでいるのでもないのかもしれないと思うことがある。同様に、友だちといるのは煩わしく、去る人がいればわざわざ理由を問うたりもしない、人間関係に淡泊な人間なのだなと思うこともある。そのあたりのことは詳しく書かないけれど、結局、無難に過ごすほうを選んでいるように思ってきたし、そう見えるだろうと信じてきた。それでよいと思うこともあるし、だからだめなんだなと思うこともある。人が去っていく理由には、いろいろあるのだろうから、なぜかを問うてみたところで、お互いしっくりといくはずもない。黙っているのが一番だなと思ったりする。

私について何がわかったのでしょうか。私は誤解を恐れるし、一歩踏み込むことができないので、もうこのまま連絡を取り合うこともないのだろう。もらったメールの返事はまだ書いていないけど、もう書けそうにもない気もしている。

_ 今度の出張、最初と最後はお仕着せの業務があるのだけど、間の10日ほどは、自由行動。この機会に見ておくべきもの、歩いておくべきところをリストアップして、移動プランを立てている。ただ、初めてのところなので、慣れるまでの時間とか、ゆっくりみたいところのプランとか、そういうところを考えながら作ると、これは本当に行ってみないとなんともわからないなあ、などと思って先に進めなくなってしまった。まあ実際のところ、今週中には旅行伺いを出さないと行けないので、適当に決めてしまうのだろうけれども、有意義に過ごしたいものだ。

_ 『アムステルダム』(イアン・マキューアン)。まだ半分なので、どのあたりがブッカー賞なんだろうとおもいつつページを繰っているところ。翻訳をいつもしている小山太一さんというかた、ものすごく翻訳のスピードが速いのだろうなあ。ジーブズもこの人が訳している。うまいなあ、簡潔だなあと思いつつ、読む。

こないだ買ったセミオーダー・シャツ屋の人と話していたときのこと。布の持ち込みもあり、とのこと。「たとえばですね、アニエスのシャツがすきだというのであれば、そのパターンをうちで起こして、仕立てることもできるのです」という。パターンを起こしてくれたりもするわけなので、そうなると、シャツを仕立てる技術のみを提供してくれるということになる。私はもともと服を仕立てるのが趣味なので、こういう話を聞くと、一体、どれくらい手間賃がかかるのか気になるので、尋ねてみたところ、5万とか、6万…とのことだった。。なんだか、やっぱり高いのだな。

花はまだ見えないのだけど、金木犀の香りが雨上がりの空気の中に、ほのかに解け合って、うっとりとする。


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