_ 某日。夜中に起きて原稿を書いていて、ふとテレビをつけたら、「永遠と一日」をやっていた。大好きな映画だ。こどもを売り買いする秘密の場所から少年を救い出した主人公が、国境地帯へ向かうバスの乗り場へ向かう。途中、大きな幹線道路沿いで車を側道に入れて、サンドイッチを買う。サンドイッチは、荷台部分を売り場に改造した真っ白なトラックで売られている。わたしがこどもの頃、家族でよく出かけた大きな公園があった。この公園の駐車場の入り口近くに、ワゴン車の荷台部分を改造したホットドッグを売る店がいくつもあった。ホットドッグという食べ物を見た初めての経験がこの屋台だった。コッペパンを真上から割ったところにカレー味のするキャベツの千切りの炒め物が敷き詰められ、パンとおなじ長さのソーセージが挟み込まれる。からしとケチャップをかけて、はふはふと言いながら食べた。特別、おいしかったわけでもなかったのだが、この映画を初めて観たときも、そのホットドッグのことを思い出した。初めて食べたマクドナルドのハンバーガーとともに、わたしの小さかったときの食べ物の思い出である。マクドナルドのほうは、当時、面白い映画のロードショーがかかると、しばしばわたしと弟を父の妹の家に預けて出かけた両親が、ある時、わたしたち兄弟とイトコたちのために買ってきたものだった。ピクルスの味が初めての経験で、強い印象を残した。めったなことではマクドナルドのハンバーガーを食べることもなくなったが、遠い外国でふとしたときに食べるようなことがあったとき、遠い日の留守番の寂しさとともに、夜遅くにわたしたちを迎えにきた母の紅潮した顔を思い出す。
久しぶりに観た「永遠と一日」は、途中でこどもが目覚めたので中断。夜中の原稿書きもそこで終わった。