_ 予約していた「苦海浄土」と「精霊たちの家」が届いたので、子どもと図書館。子どもは40度の熱を足かけ3日間経験したからなのか、足取りが覚束ず、ぼてぼてと転けている。赤ちゃんの時につかっていたスリングを出してきて、それで抱っこすると、昔を懐かしむのか気持ちがよいのか、すぐに寝てしまう。まだ病み上がり。そのくせ、日課にしている路上観察は休みたくないらしいので、図書館の帰り道は思い切り遠回りした。酒蔵から公園に抜けたところで池をふと見やると、中之島にものすごく精巧な亀の置物が大中小と並んでいた。その傍らには、これはほんもののゴイサギ(だと思うんだけど)がいる。亀さんがいるよ、などと言いながら池に近づき子どもに教えると、子どもはぐっすりと眠りこけていた。それにしてもものすごくよくできた亀だなあ、こんなのいつからあったっけか…と思ってしばらくぼんやりみていると、一番大きな亀の首がひゅうっと伸びたと思うと甲羅の中に縮むように吸い込まれていった。あら、ホンマモンやったんかいな!とひとりでびっくりしていると、わたしの左手45度のところにいた親子連れもまた「亀が動いた!」と騒いでいた。と、三匹の亀は、お父さん亀を先頭に順繰りに池の中に戻っていった。亀の甲羅干しだったのか。眠りこけた子どもを乗せて、乳母車で遠回りした道をあちらこちら見て回りながら、駅前のスーパーと薬局に寄って帰宅。
子どもの病気のため、面接をひとつキャンセル。相変わらず、いろいろと遠い道のり。ときどき、「もう死にたいな」と、思わず口に出してしまって、自分ではっとしてしまう。そのうち、慣れてしまって、無意識のうちに、洗濯物を畳んでいるときや絵本を片付けているとき、果ては子どもとげんこつ山の狸さんをしているときなどにも、ぽろりと口に出すようになった。何も知らない子どもは、その言葉が聞こえているのか聞こえていないのかわからないけれど(意味だってわからんだろうが)、一層ニコニコと笑ってじゃれついてくる。熱が出ている最中からのことだが、1分1秒でも離れるもんかという意気込みで、わたしにしがみついてくる。文字通り、トイレにもお風呂にも入れない状態だった。今までは自分の椅子に座ってごはんを食べたりおやつを食べたりしていたのに、今はわたしの膝に座ってでないと、お茶も飲まない。子どもがわたしを現世につなぎ留めようとしているかのようで、厚さ五センチはある「苦海浄土」を読むのにどれくらい時間がかかるだろうかと考えたりしている。時間は恐らく、限りなくあるのだが、無駄に使ってはいけないのだ。無駄にしてはいけない。