_ 住んでいるときにはわからなかったけれど、やはり旧本拠地であるA地点は、よいところだった。この数年の圧倒的な近代化(正確には首都の模倣的な発展だと思うのだけど)の洗礼を受けているところは、他の地方都市とまったく同じである。しかしその一方で、独自の機を伺うセンスの良さというのも確かにあって、こういうのはX地点にはないよなーと思うことも多かった。おもしろさが半減したかなと思うところもあったけれど、やはりA地点の人々のオープンさとノリの良さと率直さは一歩抜きん出ている。もっと昔、まだ余裕があったころに、家の一軒でも買っておけばよかったのだろうなあ。今はわたしなどには到底、手は届かない。それに住むとなればまたあれこれと欠点に見えてくるところもあるだろうし、ここはわたしにとっての逃避先として大事に残しておいたほうがよいのだろう。
X地点に戻ってきてから帰国の準備に追われている。朝、保育園に行くのをいやがる子どもを宥めるため、地元の市場に寄るようにしている。色とりどりの野菜や果物、大きなまな板の上でばんばんとぶった切られる肉類や魚類を見ながら、子どもはどうも食欲が沸くようで、いつもスナックやでシュウマイをふたつ買って、それを食べながら保育園に行くようになった。こういう習慣はほんとうはよくないなあと思うのだけど、日本に帰ったらまた日本の風土に適応することはわかっているので、温かく見守っているつもり。もちろん夕方、保育園に迎えに行くと、楽しかった!といって、目をきらきらさせて、学芸会のために練習している踊りや歌を披露してくれる。残念ながら、学芸会の前に帰国するので、今年も出席できないのではあるが。。
いずれにしても、子どもがこの一か月、ほんとうに元気でいてくれたことと、楽しく過ごしてくれたことだけでもありがたいことだった。