_ 子どもとはよく嘘を付き合って遊ぶ。嘘というのか、作り話というのか。河合隼雄先生のお好きな種類の嘘話である。
わたしたちの住んでいる家には、昔から、押入れ仮面、鬼子母神、パイドパイパー、カラス天狗が住んでいることになっている。アパート全体の生活用水は、井戸からモーターポンプで汲み上げたものが、各戸へ供給される。そのタンクが、わたしたちの部屋の真上にあるとのことで、結構、不気味な音が聞こえてくる。その音が日によって、また同時に使う世帯の数によって、さまざまなバリエーションで聞こえてくる。それぞれの魔物たちの個別の音として、子どもは認識している。いつも魔物たちの話をしながらいろいろな絵本を読んだり、互いに勝手に作り話をしながら眠りにつく。
それ以外の、保身のための嘘やら本当の嘘については、一応、ダメということにしてある。子どもの通学路にある巨木の枝で、子どもは何度もトトロを見たという。わたしもリスがいたと話したりしている(どちらもいないと思うのだが)。楽しい話だけではなくて、いろいろな怖い物語もしている。耳なし芳一とか。子どもはなんの先入観もないから、カエルだって平気で触るし、クモの巣にもがっと手を突っ込む。子ども自身の考え方で、苦手なものや嫌いなものが区別されるように、わたしもできるだけカエルを嫌いだということはおくびにも出さないようにしているし、動物園の爬虫類コーナーでヘビに触ったりもするようにしている。
子どもにはできるだけ大きくなるまで、自由な精神を保つようにさせたいと思っている。自分でいろいろ判断する心を、大事にさせたいと思っている。