_ 日本の産婦人科、とくに産科がなかなかたいへんなことになっているというのを聞いたのは、伯母からだった。2年前にいとこが、わたしなどよりもはるかに超高齢出産した経験から出たことばである。曰く、都心部でも産科の先生がたいへん少なくなっているため、予約を取るのがたいへんだということ。出産難民ということばもまた、昨今はしばしば耳にする。
家から歩いていける総合病院の産婦人科で検診を受けたいと思った。さまざまな種類の熱帯病の既往歴があるのと、高齢出産になるわけで、いざというというときにあちらこちらにたらい回しされない環境がよいと思ったからだ。てくてくと出かけたところ、昨今は総合病院ではいきなり診察してもらえないということがわかった。総合病院に患者が集中するのを防ぐため?なのか、まずは登録医診療所からの紹介状がないとだめらしい。一旦、指定された個人診療所ないしは病院で初診を受け、しかるべきのちに紹介状を書いてもらってから初めて総合病院へ来てくださいとのこと。ただし、抜け道がふたつある。ひとつは、毎回、決められた加算料金を支払うことを厭わないで、「ここで掛からせてください」とお願いすること。もうひとつは、救急車で運ばれてくること、あるいは急患で駆け込むこと。
実は、この総合病院に決める前に、いくつか近所の産婦人科を調べたのだが、なんと産科はもうやめました、というところがたくさんあった。ホームページなどを作っている有名産婦人科は、これはこれでまた予約が取りにくかったり、わたしのようにまだ日本で生むか外国で生むか考え中という人はあまり歓迎されないという話もきいた。
某国で食中毒にかかり七転八倒しながら、この地域では最大の病院に駆け込んだときのこと。「うちは交通事故以外は、ERの受付はしておりません」といわれ、38度の熱を出しながら、受付と大喧嘩した過去をもつわたしは、もう日本の病院のこういう対応に別に驚きもせず、加算料金払いますから、予約を入れてくださいとお願いした。すると、産婦人科は7月31日まで予約でいっぱいとな。
とりあえず、予約はいれた。妊娠は病気ではないとはいえ、これだけの先進国(としておきましょう)で、今、病院に掛かるのも一苦労というのはどいうことなのだろうかと考える。受付の人は、「調子が悪くなったら、いつでも『急患』で来てくださいね」と言う。急患であれば、なんとか押し込んで、診察を受けることができるということなのだろう。
産婦人科医はたいへん激務であり、医療過誤などがあれば訴訟問題となるリスクが高いため、なり手が減少しているとのこと。
お医者さんや看護師さんたちの労働環境の改善、妊娠中の女性とその家族をめぐるさまざまな環境の向上など、複合的に存在するいろいろな問題を吟味していくと、日本で生むより某国で生むほうが安全なのかなと考え始めている。一方で、「ひよこクラブ」とか「たまごクラブ」とかの雑誌を眺めてみると、出産ビジネス業界の躍進振りもまた顕著である模様。なんだかほんとにいろいろ、いろいろなんだなーと思うこの頃です。