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lost luggages ねぶくろ 書簡
--sleeping bag・g-ism/ist--

09-04-2011 / Saturday [長年日記]

_ わたしの頭にも胸のあたりにも、どんよりとしたもわっとしたものがいつも厚く垂れ込めているから、藤沢周平のまだ読んでいない小説を選ぶ時には、慎重でありたいと思っていた。しかし書架の前で選ぶのも、頭の芯が鈍く重たくまぶたを圧迫するから、ふらふらと伸ばした手は「海鳴り」の上下巻を選んでいた。耳鳴りと韻を踏む響きに誘われたのだろうか。文庫本を買うなんて、一体どれくらいぶりだろう。早速、帰りの車中で読み始めた。

一代で築いた紙問屋の新兵衛と、老舗問屋の女房のおこうの物語であった。今風に、下世話な表現を使えば、それはそれぞれ配偶者がいる者同士の不倫としかいえない。それがありきたりな偽純愛小説にならず、美しい人間同士の信頼感の物語に昇華されたのは、藤沢周平だからこそなのであろう。この小説を読んで、頭がすっきりとしたとか、霧が晴れたようだなどということは決してなく、今もまだぼんやりとした暗い気持ちでいっぱいだけど、藤沢小説にしては珍しく澄み渡った明るさに溢れた小説の終わり方が、とてもよかった。もちろん不安がいっぱいの主人公二人の道行きである。読者だって、そのことはようようわかっているのだが、なぜかそれほど悲観的にならなくて済むのは、やはり「純愛」ものだからなのだろうか。

_ 直前まで同窓会+花見に出席しようかしよまいかと(自分が事実上の幹事であるにもかかわらず;呼びかけ人は別の人なのだけど)悩みに悩み、夜遅くまで眠れず、明け方、起きだして、少しだけ書き物をして、結局、子連れで出席。子どもは会場となった古い民家を改装した和食店に一歩入った瞬間、なぜかはとんとわからないのだが、声をあげて泣き出した。それが結局、その日一日を象徴するような感じとなって、わたしはずっと子どもの面倒をみてばかりで、誰ともほとんど話せずにいた。でも、友人の子どもが我が子の背中をとんとんと叩きに来てくれたり、ミニカーを持ってきてくれたり、子どもは子ども同士、いつの間にか仲良く遊ぶようになっていた。デザートを注文するとき、「オレンジの人、手を挙げて〜」「こしあんがいい人、誰〜」などと呼びかけ人が声をかけてくれたのだが、我が子は、きなこがいい人〜、という声を聞いて、「はいッ!」と手を挙げていた。。耳は聞こえているんだろうか。そんなわけで、最初はおお泣きに泣いて、どうしようかという状態だったのだが、だんだんと場の雰囲気にも慣れてきて、運ばれてきた料理を手づかみで食べたり、テーブルに這いあがったりと、調子全開になっていたのだった。霧雨が一日中降っていたし、風邪を引いてしまうと、お正月に罹って以来、3月末にやっとこさ完治した中耳炎が再発してしまうのが怖かったので、お店を出て、わたしたちは帰ることにした。久しぶりだったので、足を延ばして寺町を下って下御霊神社、二条で曲がって木屋町を高瀬川沿いに下りながら、桜を見る。子どもとふたりでゆっくりゆっくりと歩いた。それだけでも今日は出かけてよかったなあと思った。子どもは終始ご機嫌で、ずっとなにかを話し続けていた。


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