_ 押し入れにはオシイレ仮面が、お風呂場にはシャワーマンが、うるさく騒げばオオカミ男が現れる。そういって、いつまでも起きていたい子どもを寝かしつけ、お風呂で遊びたがる子どもを制し、大声を張り上げて遊び回る子どもを大人しくさせようとしてきた。しかし、当地には押し入れはなく、お風呂は日本の風呂場の2倍ほどの広さがある。オオカミ男になりたいと思い始めた子どもには、どんなことばも効かなくなってしまった。風呂場には、日本地図と各都道府県の名物をイラストで表した表を貼っている。秋田県のところには、なまはげの絵が描かれている。子どもの弱点はなまはげであった。あるとき、業を煮やして、「そんなことばっかりしてたら、なまはげが来るで!」と言ったところ、怖いもの知らずの子どもの顔色が変わった。本気で泣き出すのである。よし!やった!とばかりに、この頃は、ずっとなまはげで、子どもを怖がらせている。たぶん、子育てとしては、よくないやり方なのだろうけれど、おもしろいくらいに子どもがおとなしくなるので、トラウマにならない程度に、なまはげさんにお願いしている。風呂場のイラストは、どちらかというと、全然怖い顔には見えないただのイラストなのに、子どもは子どもなりに恐ろしい存在だと受け止めたのか、なまはげだけには来てもらいたくないと真剣に考えているようである。子どもはおとなとはまったく違うんだなあ。わたしも子どもの頃、いつも寝るときに、壁を向いて寝るのが怖くてしかたがなかった。なぜだったのか、今でも全然わからない。いつも壁とは反対側の景色を見ながら寝ていた。時々、夜中に目が覚めたときに、壁を向いていることがあった。するとその瞬間に、もう怖くて怖くてしかたがなくなって、慌てて両親の寝室に走っていくのであった。だから、今でも、壁を向いて寝るのは苦手である。いつも、天井を見て寝る。こちらではわざわざベッドの置き方を工夫して、壁がどこにもこないようにしたほどである。壁となまはげとは全然、違うものではあるけれど、子どもがずっと怖がらないように、いつかきちんとなまはげさんの役割について、説明しなければいけないと思っている。