_ 昔、大阪・アメリカ村の雑居ビルの一階に、Pat O'Brienという名前の店があった。もしかすると、今でもあるかもしれないけれど。そこは今風にいうなれば、カフェということになりそうな雰囲気だったけど、700円だったか800円だったかのランチメニュー数種あって、それくらいの値段のケーキセットもあって、ちょっとアメリカン・カジュアルな内装だったような記憶がある。3回くらい行ったことがあったのは、隠れ家とまではいわないけれど、ちょっと中に入り組んだところにあって、かならず座れるからだった。急に思い出したのは、ゆうべ、夜中に目が覚めて眠れなくて、「色彩を持たない多崎・・・」を読んだからだった。読みながら、そういえば、高校時代、全員女子だったけど、仲良しグループでよくいろいろなところに出かけたなあと思い出したからだった。そのうちの何人かとは、極めて不定期的に連絡を取り合っている。でもあとの人たちたちとは、高校卒業後、たぶん、一度もあったことがない。みんなで最後に出かけたときもPat O'Brienでケーキを食べたような記憶がある。「多崎」については、どんなふうに評価すべきなのだろうか。恐らく、少なからぬ人数の人が感じたのではないかと思うけれど、「ノルウェイの森」を薄くしたような、あるいはそこからインスピレーションを得た人が似たような小説を書いてみたらこうなったとでもいうような、そんな感じがした。好きか嫌いかとか、面白かったとかつまらなかったとか、そういう感想ではなく、「全編村上春樹的」という感想しか思い浮かばない。肯定しているのか否定しているのか、自分でも不明。
徹底的に小説に飢えている。貧乏じゃなかったら、そしてちゃんとお給料がもらえていたら、キンドルを買うのだけど、状況が許さないので、手持ちの本を何度も何度も繰り返し読んでいる。おもしろい小説をひたすら読み浸る状況が欲しいものだ。