_ また出張中。今日は午後からのアポイントメント3つがキャンセルとなったため、買い出し。わたしがまだ院生だった頃、本当に行くのが楽しみで仕方がなかったモールがあった。いつ行っても人がたくさんで、外国人も地元の人も、気軽に入れて、それなのにほんの少しだけ背伸びした雰囲気が楽しめるとても楽しい場所だった。何年もご無沙汰していて、前回、ほんの少しだけ時間が空いたとき、ふと思い立って、スカーフを探しに行った。いつもの仕事着が少し地味すぎて、年齢以上に老けて見えるぞと、ショーウィンドーに映った自分の姿をみて思ったからだった。目当ての階に上がる途中から、その凋落ぶりが目に見えた。スカーフなど小さな装身具を売っている階は、置いてある物もまったくいけてない。昔はディスプレーも本当に素敵で、ここでたくさん、素敵な物を買った。それに、その頃買った装身具は、スカーフも含めて、今、身につけていても、それいいねえと言われるのである。決して値の張る物ではなかったけれど、それくらい素敵なものがたくさんあったのだった。
今はこのモールの一番の目玉は、地下一階のフードコートと地下二階のDIY屋。今日、わたしは地下で、子どものために、ディズニーの水筒を買い、一階のATMでお金を引き出して、あっという間にモールを後にした。そしてホテルの隣の日系スーパーで、まだ半額札が貼られる前にさっさと夕食を買い、古本屋で文庫本を買って、あとはホテルで午前中の会議の議事録を書いて本を読んで過ごした。時間がたくさん流れた。わたしはなにも変わっていない。変わったことに気が付かないほど変わったのかもしれない。いずれにしても、もうなにも気にならないということにすら、それほど驚くこともなくなっている。
読了:インシテミル/米澤穂信