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lost luggages ねぶくろ 書簡
--sleeping bag・g-ism/ist--

17-08-2016 / Wednesday [長年日記]

_ 海外に住んでいると、日本では絶対に知り合いにならないような人と知り合いになったりする。わたしは何も自慢するようなことはないので、初めて出会った人にも、ある程度長く知り合いでいる人にも、基本的にはあまり深い話はしないようにしている。この時代だからということもあるが、海外に住んでいる一部の日本の人が、そこで知ったことを実に見事に次の人に明かすことが多いということを、今の場所に根を下ろすようになって初めてわかった。信用とまではいわないけれど、まさかこんな個人的なことを誰かに話すことはないだろう、とさえ思いもしなかったようなことを、実に気軽に次の人へ、そしてまたその人は次の人へと話していかれたこともあった。そういうのは個人の資質の問題で、海外に住んでいようがいまいが、どこでだってその人がいるところではありうることなのかもしれない。わたしはそういうことに関して、とても疎い人間だったということなのだろう。今はよほどのことがない限り、愚痴のひとつだってこぼさないようにしている。人を見る目がないことがいいことなのか悪いことなのか。すくなくともわたしに関しては、人を信用しすぎるのは見る目がないことであり、もっと自分を守るということを考えなければもっとひどい目に合う、と今では思っている。このことは、あまりよいことではないとは思いつつも、海外に住んでいるということを理由に、自分では納得している。人を信頼するのは信頼されるよりもむずかしい。性悪説がいいということではなく、もっと見極めて、ものごとをよく見て考えなければと思っている。

この半年ほど、わりと頻繁に会って話をする人がいた。同性だし、わたしにとっては少し年上のイトコやわかいオバのような気安さもあって、食事やお茶もよくしたし、仕事の話などもよくした。基本的にはとてもよい人だと思う。ただ、そうしている間にわたしのことを懐柔させやすい人間だとみられたのか、どちらかというとその領域に踏み込んでもらう必要はまったくないということに、最近、あれこれ意見をされるようになってきた。

たとえば服装とか髪型とか化粧の仕方とかそういうことである。いつも幸運を呼び込むためには白い服を着る必要がある、髪は一か月に一度はカットしなければならない、二週間に一度はエステで手入れをしなければならない、人は見た目が大事、とかそういうことである。それぞれ大なり小なり、悪いことではないと思う。余裕があればそうすればよいことで、わたしはそうする人のことをそれは素敵なことですねとは思うものの、そうしない/できない人のことまで考えたりすることはしない。見た目とはいうが、それは内面あるものが映し出される話であって、そうでなければ何をしたって白塗りになるだけの話である。

ここにAさんという人がいる。Aさんは、どちらかといえばクラスにひとりはいそうなタイプのファッション雑誌とかほとんど読みそうにないタイプで、流行とかそういうことに関係なく、自分のセンスを大事にし、それさえも開拓の余地はまだまだあるから、いろいろと冒険して挑戦している途上にあって、いつかきっと自分の型のようなものを手に入れるはずの人である。なんといってもこの人はものすごく難しいことで知られるある国家資格を持っている人なのだ。この資格には、頭の良さや技術だけでなくセンスも必要とされる。わたしはそれだけでもう尊敬してしまうのである。

このAさんのことを、年上のイトコかオバのような人は、かなり辛辣にコメントをする。服装とか髪型についての感想はまだしも、化粧だとか肌の手入れだとかもっと込み入ったことまで、干渉している。わたしだったら耐えられないと思っていたし、いつかAさんに、年上の人からのコメントはあまり気にしなくてもいいんじゃない?と言いたいと思っていたくらいなのである。わたしに言わせれば、Aさんのどこかギクシャクとしているところはすべて経験の少なさから来ているだけのことだ。これからいくらだって、自分の力で変わっていく人だと思っていた。それが、このAさんを変えることに成功したと年上のイトコかオバのような人は思い込んだのか、次なるターゲットはわたしだと思うようになったらしい。わたしは、人が美しく見えるのは、服装とか化粧とか髪型よりもむしろ、姿勢とか内面だと思っている。姿勢というのは態度のことではなく、物理的な立ち姿とか歩き方とかそういうもののことだ。どんなにきれいにしていても、背中がしゃんとしていないのはよくない。そう思っているから、年上のその方がわたしに触手を伸ばしてきたときも、さらりとかわすことができた。人の意見に耳を傾けないとかそういうことではなくて、ある領域に関しては、わたしはできるだけ自分の考えをとおしたいというだけのことなのだ。研究とか仕事に関しては、最終的に決めるのはもちろんわたしだけど、できるだけいろいろな人の意見を聞きたいと思っている。風水的には黄色の服とか茶色の服はよくないと、わたしの場合は書かれていたりするのだけど、自分が着たいと思ったら、なにを着たっていいと思うから、よく着ている。外で素敵な人をみたら、その人みたいな服をまねっこしたっていいとも思う。今よりも素敵な化粧の仕方があるならば、挑戦したっていいし、エステにだっていけばいいのだ。

でもわたしがそうしないのはひとつには、別に今、問題があるとは思わないこと、ふたつめには経済的な余裕がないこと、これだけである。

見た目が変わることと経済的状況の改善にはもしかすると相関関係があるのかもしれない。でもそれよりも、年上のイトコかオバのような人のやり方は、どこか人をコントロールするようなところが感じられて、違和感を覚えるのだ

人を変えるということは、その人が今もっているすべての資質を否定するようなところがある。人に影響を与えるということは、意図せずに、ある人が持っているよい部分(悪い分のときもあるかもしれないけれど)をほかの人が「欲しい!」と思わせるようなことだと思う。海外をあちらこちら回って活躍してこられて、華々しい経歴のあるかただけに、自分の成功への道のりとおなじものを、他者にも与えたい人なのかもしれないけれど、日本でもし知り合ったのだとしたら、わたしは今ほど深く知り合うようにはならなかったようにも思う。わたしが思う素敵な人は、姿勢がよくて、話す言葉が美しい人だ。内面の美しさは、言葉や表情になって、外に出てくるのだと思う。


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