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lost luggages ねぶくろ 書簡
--sleeping bag・g-ism/ist--

04-08-2022 / Thursday [長年日記]

_ 18歳から22歳、つまり高校から大学にかけてのある時期、狂ったように通い詰めていたレンタルCD屋があった。確か3つくらい支店があるような、地元では割とメジャーなレンタル屋だった。CDをカセットテープに録音するような時代のことだ。3枚1,000円で5日間、借りることができた。ときどきキャンペーンがあって、5枚1,000円というときもあった。午後10時に閉店するところ、アルバイト帰りの9時40分に駅に着く電車から駆け下りて、改札からつながっているしょぼいショッピンビルを駆け上がり、お店に向かってエスカレーターを疾走した。店に滑り込み、さっと次のCDを3枚選んで、さっと支払いを済ませて、なかよしの店員さん(高校の同級生)と二言三言会話して、自転車置き場が閉まる数分前に滑り出て、慌てて夜の道を帰宅するのだった。

その店にはアルバイト店員が3名いた。全員がバンドの人だった。新着CDには、彼らの手書きのPOPが飾られている。それを読みつつ、新しい音楽を次々と開拓していった。のちに、レンタル屋とは逆方向に向かってわたしの生活圏が広がるようになり、新しい音楽を発見するのは、より大きなCDショップへと移った。をを、CDショップ。WAVEとかVirgin Recordsとか。どれほど山ほどCDを買っただろうか。

ところでそのレンタルショップで、わたしに次々と新しい音楽の世界を教えてくれた店員さんの手書きPOPだが、あるときこう書かれていたものがあった。「われわれは、気でも触れたか!衝撃の!”#$%&」。実は、そのPOPがプッシュしていたバンドのことはまったくこれっぽっちも覚えていないのだが、そのPOPの表現が、あれから長々と歳月が流れた今でも目に焼き付いて離れないでいる。折りに触れ、「われわれは気が触れたか!」このような、今では放送コード的に不適切と言われかねない表現を、これまでのわたしの人生では、ただの一度も使うことはなかった(使いそうになったこと、あとから使っておけばよかったと思ったことは多々あるにせよ)が、いつか使う日が来るかもしれないと、ずっと忘れることができなかったのである。しかし、ついに堂々と使う日が来た。

6月の半ばごろだっただろうか。インターネットであるニュースを読んだあと、横に出ていたYouTubeを「見てみようか」と、何気なくではなく、自分の意志でクリックした。をを。これは、なんだ?!へえ~、へえ~、すごい!なんか、明るい!元気になる!すごい!すごい!かっこいい!語彙がこれほど貧弱だったとは思っても見なかったが、文字通り、バキュ~んと胸を撃ち抜かれた。言わずとしれたBTSであった。わあっ!いやっ!すごい!ひや~!という感じで、ただただ次々と動画を見続けた。同じ動画を何度も何度も見続けた。いや~、歌はうまいし、踊りはうまい!すごいダンスがかっこいい!なんて揃ってるんだ!そして、なんてみんな楽しそうなんだ!!

_ こんなおばさんは、今、世の中にそれはそれはたくさんいるそうだ。わたしだけではないらしい。最初は何人いるのかもよくわからず、どの顔もおなじに見えた。そのうち、一番大きい人と比較的小柄な人だけは、なんとなくわかるようになってきた。しかし別の動画を見るとまた識別できなくなった。何度も何度も見ているうちに、やっと全員の顔が違うということがわかるようになり、名前もなんとなくわかるようになってきた。そこまで、1週間ほどかかった。そして、動画を聞かなくてもなんとなく声の違いがわかるようになってきた。そこまで大体2週間。今は、細かいパーソナルデータは全然知らないけれど、名前と歌声がわかるようになった!すごい!

いわゆる推しはいない。全員がかわいらしい。全員が好きだ。おばさんにはこういう人も多いらしい。バラエティっぽい動画もたまに見るようになり、いつの間にか子どもとも一緒に見るようになった。気がつけば、KINDLEには彼らが特集された雑誌が入っていたりもする。おやおや、おやおや、である。そして、今やわたしはハングルまで勉強しているのである。本当に、わたしは気でも触れたかのように、毎日BTSのいる世界を生きている。小泉今日子もYOUも好きらしい。二人が話すポッドキャストを聞くと、いちいちわかるのである。わたしも!わたしもおんなじだよ!そう心の中で叫びつつ、日々を暮らしている。「連帯」という言葉がキーワードとなって、BTSとファンの結びつきを理解するような本もあるのである。イギリスにはBTS学会もあるらしい。わあ~、なんだこれは!BTSがいる世界にわたしも生きている。いや~、なんかもうすごいことである。

_ かれらのデビューからの音楽を毎日、少しずつ、聞くようになった。そうすると、だんだんと、なぜ彼らが少し休んで自分がしたい音楽をソロっとしたいと思うようになったかがわかってきた。グラミー賞にノミネートされた楽曲はもちろん素晴らしい。とても明るく元気で、踊ろうなどと人生で思ったことが一度もないようなわたしでさえ踊りたくなったくらいである。だけど、最初から彼らの軌跡を聞いていくと、わかる、わかる(わかっていないかもしれないんだけど)と思うようになってきた。恐るべしである。時代を一気に駆け抜けて、わたしもやっと今、ARMYたちに追いついたような気持ちになっている。恐るべし、である。

_ 付随的に、他のKPOPもたくさん聞くようになった。いや、すごい!かっこいい!なんとか系とかはわからないけれど、とにかくすごい!レコード会社の友人に言わせると、「全員西洋音楽カブレだよ」らしいが、いや、そうだとしても、この音楽はもうKPOPとかそういう分類を超えているんじゃないか。そんなふうに思うほどだ。わたしにとっては、小学生時代にピアノ教室でビートルズのHey,Judeを聞いたこと、フリッパーズ・ギターを初めて聞いたときのこと、それ以来の新しい音楽の扉を開けた瞬間だった。DynamiteやButterだけじゃなかったのである。最初からひとつずつ聞いていくと、本当に今ココのYet to comeが、もう必然的な存在にしか思えなくなるのである。そしてこんなことを考えているのは、世界中にわたしひとりではなく、たくさん、たくさんいるのである。いや~、なんか知らんがすごい!

_ というわけで、久しぶりに音楽を聴いたような気持ちにすらなってしまっている。彼らを知るまでだって、毎日Spotifyを聴いていたのに!

新しい日々を過ごしているような気持ちになっている。本当に、No music, No lifeな日々を過ごしている。ビバ!VIVA LAVA LIVA!

_ と、暑い日々をさらにもっと熱く過ごしているのでした。

おわり。


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