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lost luggages ねぶくろ 書簡
--sleeping bag・g-ism/ist--

03-10-2015 / Saturday [長年日記]

_ 10月になった。今学期は学生の数がとても多くて、8月の終わりからずっとてんてこ舞いをしている。小学校準備学校に入学した子どもの学校が弁当持参ということもあって、毎朝3時半起きである。バスが7時前に迎えに来るから、それまでになにもかも身支度も整えておかなければならないのだが、肝心の子どもがぎりぎりの6時にしか起きないという体たらくの上、寝起きがすこぶる悪いのである。毎朝、金切声をあげる子どもとわたしとで、その時間帯の数時間だけで、一日が終わった気がするほどである。

子どもの学校は、いいのか悪いのか全然わからない。今のところ、判断を保留している。世間的には「とてもいい学校」とされているようだが、ガイコクジンのわたしにとってはまるっきり理解できないふしぎなシステムがあったり、子どもたちへの連絡は基本的にPTAのクラス長のおかあさんからWhats appとかいう賢い電話のアプリケーションで伝えられることになっていたりするのである。賢い電話を持っていないわたしは当然のごとく、すべての情報網からとりこぼされていて、そのことがわかるのに1か月かかったのだ。普通、どうもこの子の家には連絡がいってないんとちゃうか・・・とか、想像がつくんじゃなかろうかと思うのだ。しかし、そういうふうには考えられないようで、「ええ、賢い電話を持っていない人がいるの?!」という方向に、物事は流れるのである。この件については、幸いなことに、賢い電話を持たない主義の人は大学に勤める人に多いことが認知されている状況がこちらの社会にはある(日本もかな)。それでなんとか別ルート、すなわちガラケーのテキストメールで連絡してくれるように手配してもらえたのだった。まあほかにもいろいろあるんだけど、またそのうちに。

先日、インターネット会社の連絡で、新しい4GLTEのWi-Fiモデムを、今使っているモデムと引き換えに通常価格の半額で交換するというお知らせが来た。それでそのプロモーションの最終日に展示所へ行って、交換をしてもらった。嘘のように早くなった。もうずっとインターネットから遠ざかっていたのだけど、さすがにこれだけ早いとなると、ストレスもかからないから、気軽になんでも調べられるようになった。家で授業の準備もできる。こういう経験をすると、賢い電話を持たない生活と、持った生活の違いというのも、なんとなく想像できなくもないのだけど

まだもう少し、時代に逆らっておこうと思う。とくに理由はないのだけど。昨日から、友だちに借りた『遠い太鼓』(村上春樹)を読んでいるので、余計にそんなふうに思っている。とにかく、このエッセーが書かれた1986年からの3年間て、まだインターネットも黎明期も黎明期、日本ではほとんどまだ誰も知らないという時代で、イタリアでは白黒テレビの新品が売られていた時代だったのである。たかだか30年あまりで、有線電話すらもう持たない世帯が出てくるなんて、どこの誰が想像できただろうか。今から30年後、どんな世の中になっているのだろうか。


04-10-2015 / Sunday [長年日記]

_ 子どもが行きたいというので、近所の世界遺産へ。この遺産は二カ所に分かれている。一カ所はメジャーな遺産で、ほとんどのガイドブックはこちらのことしか紹介していない。もうひとつはシャトルバスで移動しなければならないし、そこに行くためには入場料も2倍になる。そういうわけでほとんどの人が行くのをやめるのである。われわれはこの誰もいかないほうが好きなのだ。

昨日はお弁当を持って行ったので、誰もいない遺跡の石に腰かけて、風に吹かれながらお弁当を食べた。子どもも思いっきり走ることができる。昔の入浴所の遺構には水が湧いている。そしてなぜかいつも、近所の人がこの水で洗濯をしている。

この遺跡の雰囲気はベトナムのフエに少し似ている。荒涼とした雰囲気が似ているだけで、それ以外の部分はまったく似ても似つかないのであるが、この荒涼とした雰囲気というのが、なぜかわたしも子どもも気に入っている。きっと、ここ以外のこの国の雰囲気が荒涼とはまったく正反対にあるような猥雑の極みにあるからなのだと思う。

十分にマイナー遺跡を堪能したあと、メジャーへ移動。「ドコカラキマシタカ」とか「Where are you from?」などと、わかものらに聞かれる。わたしはあまり親切で親しみやすいガイコクジンではないため、ぶっきらぼうに「ここに住んでますねん。ほっといて」みたいな感じで答える。わかものたちは、自撮り棒を振り回して、観光客がほかにもいることをまったく考慮せず、あちらこちらでポーズを決めている。ひとり自撮り棒もたくさんいる。そういう傍若無人に腹を立てるのは、賢い電話を持っていないからとかそういうことではなく、本当に迷惑だからだ。それだけのこと。子どもの前でこの態度もなかろうとは思うものの、あの自撮り棒マナーは、少し行き過ぎている。取った端から、そこここに立ったり座ったりして、すぐにインタスタグラムとやらに投稿するらしく、そういう態度もまたほんとうに鬱陶しいことこの上ない。若者に限らず、老いも中年も、みな、賢い電話を操作しながら世界遺産の敷地を埋め尽くしている。うざいなどと感じるわたしが悪いんだろうな、きっと。といじけてみるのである。


12-10-2015 / Monday [長年日記]

_ 古いアパートなので、洗濯機を置くスペースがない代わり、お手伝いさんが洗濯物を洗うスペースというものがある。うちにはお手伝いさんはいないので、毎晩、そこで洗濯をしている。昨日、バケツでごしごしと押し洗いしていたら、子どもがいつの間にかやってきて、小さな自分用のバケツで自分の靴下を洗い始めた。そして、ママ、いつもママを怒らせるようなことばかりして、ごめんね、といった。

子どもが小学校準備学校に入学して以来、家を出る時間が小一時間早くなったため、子どもも睡眠不足になった。わたしもお弁当を作らないといけないので、毎朝4時起きをしている。ふたりともどことなくいつも疲れていて、それで小さなことでイライラするようになっていた。

子どもなりにこれではいけないと思ったのだろうか。なんていい子なんだろうと、洗濯の泡まみれの手で子どもをぎゅっと抱きしめた。こんなにいい子が自分の子どもだなんて、とても信じられない。神様、ありがとうございます。悪いのはわたしのほうなのに、子どもに謝らせるようなことをしてしまったのだ。これからは、悪いことは全部、わたしのほうに回してください。ずっとやさしい子どものままで大きくなりますように。いい子でなくていいから、ずっと元気でいてくれますように。神様、お願いします。


13-10-2015 / Tuesday [長年日記]

_ 先日、交換したばかりの4GLTEのWi-Fiモデムが早くも故障しましたので、交換に行ってきました(笑)。それにしても、壊れるのが早すぎるにゃあ。ガイコクジンなので、いつも番号札はくれないで、早く順番が回ってきた窓口に呼ばれる。ありがたいサービスだが、なんとなくおとなしく順番を待っている人に悪い気がして、早く終わってくれないかと思いつつも、結局、なんやかんやで小一時間ほどかかるのであった。

持参したiPodTouchで、Wi-Fiの通信状況を確認。OK。帰ってきてパソコンで確認。OK。できるだけ、長く壊れませんように。。。

今日は、午前中から大学もずっと停電だった。新しい学部棟を建築中なのだが、その際に、周囲の棟の電線を切ってしまったそう。もしかすると、今週いっぱい、学部内のすべての校舎が停電するんだとか。わたしは今日の午前中で、今週の授業がすべて終わったからいいんだけど、たいへんだなー。それにわたしだって、来週の講義の準備ができないわけで、えらいことになった。Wi-Fiも新しくなったから、ずっと家にいるという選択肢もあるから、それはそれでいいのかもしれないんだけど。

ところで、建築中と建設中とどう違うのだろうか。雰囲気的には、小さいものは建築で、大きいものは建設という気がする。そんなふうに理解してきた。

ところが、この国では、大きな建物であっても、小さな建物であっても、それが作っている最中なのか壊している最中なのか、よくわからないことが多い。そんなバカなと思われるかもしれないのだが、本当にそうなのだ。説明が難しいのだが、とにかくどっちなん!?という状況なのである。その理由は、足場が竹で組んであるからなのかもしれない。5階建てくらいまでだったら、竹をつなぎ合わせたような足場でなんとなくふわふわと建てている。そういう事情もあって、建築中という雰囲気が漂っているのかもしれない。決して、高度なテクノロジーを駆使して、建設しているという雰囲気ではないのだ。三匹の子ブタの三人目にように、コツコツとレンガを組み立てて作るわけだから、そう感じるのだろう。

先週から、『遠い太鼓』と『海辺のカフカ』再読。やっぱり前者のほうが好きだ。


24-10-2015 / Saturday [長年日記]

_ たまたま入手した『図書館戦争』が面白くて、いつのまにかシリーズを全部手に入れて、折に触れて読むようになった。はじめのうちは、作者の独特の日本語遣いがどうしてもなじめず(今でもやっぱり、これはどうかな・・・という表現はいくつかある)、頭がいたくなったのだけど、これも一つの日本語表現と思って読むと、やっぱりこういう日本語は外国人の日本語学習者には絶対に書けないよな…などとあれこれ感じるのであった。そんなふうに思うこと自体もおもしろい。話自体、面白いと思うんだけど、どことなく、違和感は確かにある。メインの登場人物意外の登場人物がほとんどいない。それが違和感といえば違和感でもあるのだけど、もううるさいことを考えずに読むようにしている。なにしろ読むものがほとんどないから、もう仕方がないのである。なんだって読む。でも、やっぱりどうしても読めないものもあるんだけど。。日本から来る人に頼んで持ってきてもらった多和田葉子の日記が面白くて、早く終わらないように、ちびちび読んでいる。その中に、多和田葉子が宮部みゆきの小説を読んだという記述があった。なんと、多和田さんも宮部みゆきを読むのか!と驚いてしまったり。宮部みゆきは面白いと思う。でも、多和田さんが面白いと思う視点は、やはりなんというのか、いかにも多和田さんらしいポイントであって、なるほどなあと思った。それで、多和田さんの日記を読みながら、なんとなく水村美苗の『日本語が亡びる時』の第1章を思い出した。なんとなく、似ていると思ったのは、いかにも「作家」らしい視点とか文体の温度とか、だ。文体の温度ってなんだ?とも思うのだけど、葉っぱと苗って、やっぱり似ているから、なにか共有されるものがあるのかもしれない。なんて、こじつけて解釈している。

ああ、自由に次から次へと、本がよみたい。。


25-10-2015 / Sunday [長年日記]

_ 旧知の人と会うので、手土産を買いに街へ。2つある王宮のうちの小さいほうの前庭で、なにやらお祭りらしきものが開かれていた。こういう情報は、全然、普通には伝わってこないのである。うちは地方紙じゃなくて全国紙を読んでいるということもよくないのかと思うのだけど、とにかくこういう「何月何日に、どこそこでなにやらがあるでえー」という情報は、ピンからキリまでなにもかも口コミなのである。口コミネットワークに入っていないと、徹底的に情報は入ってこない。はい、端的に言って、寂しいことです。ちょっと気落ちしておみやげを買って、ああ、こんなお祭り、踊り好きの子どもはきっと見たかっただろうなあ、、、なんて思ったりしたのであった。

ちょっと訳ありの学生の、指導教官でもなんでもないのだが、心の指導教官になっている。学生は、本来の指導教官のところよりも足繁く、わたしのところに来る。で、一度来たら、2時間くらい話していく。それは全然、構わないのだが、本来の指導教官がどう思っているかを考えると、どうすべきかと考えないわけに行かなくなってくるほどによく来る。この学生は、とにかく並み居る教員よりも遥かに日本語がうまい。うまいとか下手とかそういうレベルを越えて、日本語を理解している。作文など、今時の日本人大学生などとは比べ物にならないほど、うまい。修辞の技術も、普通のレベルを越えている。こういう天才がまれにいるんだよなあと、時々、同僚の先生たちに、この学生のずば抜けた才能について語り合いたいと思って話を振るのだが、これがまた、みな徹底的に無視をするのである。その気持はわからないでもない。先生たちにすればさぞかし面白くないことだろう。でも、こういう人が将来的に学科に来てくれれば、それはそれは素晴らしいことになると思うのだけど、この国では突出した才能は、徹底的に妬まれるところなのである。だから、外交官にでもなればと、いつも話している。わざわざ虎穴に入って、潰される必要はないものなあ。なんとかしてあげたいけど、これだけできるから留学する必要もないなどと言われたりするのも、気の毒な限りである。うまくいかないものなのだなあ。。


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